アナログか、デジタルか どちらがクルマのメーターに最適? 英国記者の視点

公開 : 2025.06.03 18:45

最近の新型車では、デジタルのインストゥルメントクラスターが一般的なものとなってきました。アナログのメーターはブガッティのような高級車にしか採用されていません。その功罪を考えるAUTOCAR英国記者のコラムです。

高級車専用装備となりつつあるアナログメーター

先週、たまたまレンタカーとしてボルボXC60に乗る機会があった。しばらくそのデジタルのインストゥルメントクラスター(メーターパネル)に向き合うことになったが、本来ならキア・ピカントを借りる手筈だったので、この結果に不満はない。

XC60は快適なクルマであり、画面も基本的には見やすい。批判するのは簡単だ。筆者を含め、多くの人々が、使いやすい物理的なボタンを捨て、フォグランプのスイッチなどの重要な機能もタッチスクリーンに移行するという、最近のボルボのインテリアデザインに不満を抱いている。

ブガッティ・トゥールビヨンにはアナログメーターが採用されている。
ブガッティ・トゥールビヨンにはアナログメーターが採用されている。

もちろん憶測の域を出ない話だが、実はそれが、実利的なホーカン・サミュエルソン氏が暫定CEOに復帰した理由の1つかもしれない。彼は、クルマはスマートフォンではないことを理解している、堅実な人物だ。

XC60は2017年から販売されており、その間にインストゥルメントクラスターもアップデートを重ねてきた。しかし、シンプルなグラフィックとフォントは依然として好印象だ。ドライバーに過剰な情報を表示しない点も評価できる。

地図表示は必要に応じてオン/オフの切り替えが可能。また、スピードメーターとタコメーターの2つのダイヤル(文字盤)が維持されているのも嬉しいポイントだ。ダイヤルの素晴らしさは、短い時間で多くの情報を伝えられる点にある。

メーターの上限と下限、針の位置、針の動く方向、針の動く速さを一目で確認できるのだ。数字だけではこのようなことはできない。数字は現在位置を示すだけだ。

映画によくあるシーンで、飛行機が墜落しそうになっているとき、針が反時計回りにぐるぐると高速回転する映像を使うのには理由がある。それが何を意味するかは、誰もが知っている。

……ということは、このボルボのメーターは、速度だけを示す数字よりも便利なはずだ。しかし、実際にはそうではない。

ダイヤルは画面の端に目立たないように配置され、速度を示す太字の数字フォントが中央に大きく表示される。すぐ隣には道路の速度制限標識を模したグラフィック(もちろん、常に正しいとは限らない)があり、筆者はつい数字の方を頻繁に確認してしまう。

これは数字フォントの大きさによるものだ。ただ、日常の運転では速度変化がとても遅いため、数字だけを見ていてもそれほど問題はない。

また、マイルドハイブリッドエンジン、オートマチック・トランスミッション、交通量の多い道路、一般的な制限速度などを考慮すると、タコメーターに注意を払う必要もない。

ダイヤルがもっと大きく、制限速度を示す小さな赤い針があれば、ディスプレイはもっと便利になると思う。制限速度に近づいていることを知るには、針で表示してくれる方がいいのだが、そうしたインストゥルメントは副次的な機能に降格されたり、あるいは廃止されたりしている。

これは自動車業界全体に言えることだ。筆者が最近試乗した新車の中で、スピードメーターの針がダイヤルを回っているのをはっきりと意識したのは、ケーターハム・セブンとモーガン・スーパースポーツだけだった。モーガンには補助的なデジタル数字も付いていた。

針が素早く動くと予想されるポルシェフェラーリでも、速度を示す数字と、回転数を示すダイヤルが並んで表示されている。

これは避けられない傾向だと思う。2つの大きな数字は、小さなダイヤルよりもスペースを取らないし、現代の法規ではドライバーに十分な(しばしば過剰な)情報を表示することが義務付けられているため、デジタル画面を完全に廃止することはできない。

しかし、デジタルの美しさには限界があるのかもしれない。筆者が借りたXC60のディスプレイの解像度は高く、フォントが若干古めかしいものの、スカンジナビア風のクールな雰囲気を漂わせている。

これ以上に豪華なディスプレイを想像するのは難しい。ロールス・ロイススペクターベントレーベンテイガのメーターの見栄えがこれより良かった記憶はないし、そのような確信もない。

そのため、新型ブガッティ・トゥールビヨンに採用されているスピードメーターのようなアナログのダイヤルが、高級車の象徴となるだろうという話も出ている。デジタル時計やスマートウォッチが実用面ではアナログ時計に取って代わったにもかかわらず、高級時計には依然として針が残っているのと同じように。

もしそうなるなら、筆者は賛成だ。なぜなら、美しくデザインされたダイヤルは単なる飾りではなく、数字だけでは伝えられない情報も教えてくれるからだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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