空冷らしさ満点 フォルクスワーゲン・タイプ3 UK版中古車ガイド(2) 宿敵は例に漏れずサビ

公開 : 2025.09.07 17:50

既存技術を活用しつつ、ポップでスクエアな見た目のタイプ3 空冷ワーゲンらしさ満点  ビートルより優れた乗り心地と操縦性 全体的に錆びがちなボディやシャシー UK編集部が魅力を再確認

空冷のフォルクスワーゲンらしさ満点

フォルクスワーゲンの社内デザイナーが生み出したタイプ3のスタイリングは、タイプ1とまったく異なる印象を与えるが、メカニズムの多くは共有。運転体験は、クラシカルなサウンドと相まって、空冷のフォルクスワーゲンらしさ満点だ。

しかし、タイプ1より静かで強力。安定性も高い。高速道路の速度域でも、よりリラックスして運転できる。後席の空間には余裕があり、僅かに高級志向の内装を得ている。フロント側にも大きな荷室がある。

フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)
フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

半世紀も経れば、高耐久の空冷エンジンといえどもリビルドは必要になる。オイル漏れや排気ガスに混じる白煙、パワー不足、始動性の悪化などの症状が出たら検討したい。専門ショップへ持ち込めば、そこまでの高額は取られないはず。

トランスミッションも同様。フルード漏れや変速の渋さ、走行中のギア抜け、変速時にギアの回転数を合わせるシンクロの不調などへ注意したい。

ボディやシャシーは全体的に錆びがち

新車時は先進的だった、ボッシュ社製のDジェトロニック・インジェクションだが、部品の入手が難しいことや専門的な知識が必要なことを理由に、キャブレター化されている例も珍しくない。しかし、正しく調整できれば長くトラブルフリーで動くはず。

サスペンションはシンプルだが、摩耗していて不思議ではない。トーションバーを緩めてのローダウンは珍しくない。落としすぎると、路面へ擦ってしまうが。

フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)
フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

1965年式までは前もドラムブレーキで、フェードしやすい。ディスクブレーキは、キャリパーやスレーブシリンダーの固着へ注意したい。ブレーキ関係の部品は高価だ。

タイプ3は、ボディやシャシーが全体的に錆びがち。ドアは軽くなく、ヒンジがヘタりやすい。ブラジルでは約50万台が生産され、オーストラリアでも作られていた。珍しい装備をまとう場合は、ドイツ仕様ではない可能性が高い。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

タイプ3の宿敵は、例によってサビ。シャシーのボックスセクションや溶接部分、フロントアクスル・チューブ、ボディとフロアの接合部分、ピラー、サイドシル、ホイールアーチ、ジャッキアップポイント、リアのシートベルトマウントなどが錆びやすい。

他にも、サブフレームやサスペンションのアッパーマウント、ドアの底面、スペアタイヤハウスなどがチェックポイント。ルーフ横の雨樋も錆びる。

フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)
フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

ボディサイドのエアアウトレットを覗くと、内側の状態を確かめられる。塗装に艶が残っていても、裏側が綺麗とは限らない。化粧トリムは入手が難しい。

エンジンとトランスミッション

空冷の水平対向4気筒エンジンは、高さが50cmもない。エアクリーナー・ボックスは、残っていない場合が多い。点火プラグの交換は難しいが、オイル量はリアハッチやテールゲートを開くと簡単に点検できる。

オイル漏れの有無や、オーバーヒートの痕跡を確かめたい。シリンダーヘッドには亀裂が入ることがある。トランスミッションは、4速マニュアルか3速オートマティック。シンクロの状態や変速の滑らかさ、走行中にギアが抜けないか、試乗で確認したい。

ブレーキとステアリング、サスペンション

ブレーキキャリパーやスレーブシリンダーは固着しがち。ブレーキホースの状態もチェックポイント。ステアリングは、遊びが不自然に大きくないか確かめたい。サスペンションのガタツキにも要注意。

インテリア

シートカバーやカーペットは新品で購入できるが、内装パネルやトリム類などは入手困難。可能な限り、部品が揃っている1台を探したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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