ビートルより走り上質 フォルクスワーゲン・タイプ3 UK版中古車ガイド(1) うれしい実用性

公開 : 2025.09.07 17:45

既存技術を活用しつつ、ポップでスクエアな見た目のタイプ3 空冷ワーゲンらしさ満点  ビートルより優れた乗り心地と操縦性 全体的に錆びがちなボディやシャシー UK編集部が魅力を再確認

ビートルの技術を流用 ポップでスクエアなボディ

フォルクスワーゲンビートル(タイプ1)が、変速しやすいオールシンクロ・トランスミッションを得た頃、同社はより大きな利益を求めていた。その技術の活用は、1961年に進展する。

新設計のクランクケースとクランクシャフトの開発で、水平対向4気筒エンジンは排気量を1192ccから拡大。カルマン社と共同で生まれたクーペ、カルマンギアと並んで新たな顧客獲得が目指されたのが、フォルクスワーゲン1500、通称タイプ3だ。

フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)
フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

ホイールベースはタイプ1と同値ながら、ポップでスクエアなボディで余裕のある車内空間を創出。冷却用ファンをクランクシャフト側へ組むことで、エンジン高を低くし、その上部には荷室を設けることもできた。

当初は2ドアのノッチバック・サルーンでスタートし、ステーションワゴンのヴァリアント(スクエアバック)は1962年に登場。12台の試作で終わったが、1961年にはカブリオレも発表されている。2ドア・ファストバックは、1965年に追加された。

優れた乗り心地と洗練された操縦性

ビートルとの部品共有でコストを抑えつつ、リアトレッドを拡大し、フロントへアンチロールバーを与え、優れた乗り心地と操縦性を実現。エンジンとリアサスペンションはゴムマウントを介するサブフレーム側に組まれ、洗練性も高められていた。

良好な運転姿勢と快適な走行フィーリングは、高い評価を獲得。車重の6割以上がリアアクスルへ掛かり、横風を受ける高速走行は得意ではなかったが、ステアリングは正確で軽快に進路を選べた。

フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)
フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

1963年に最高出力2割増しのツインキャブ仕様が登場し、1965年には1600ccへ拡大。フロントのディスクブレーキが標準装備になっている。1967年式からは、他社へ先駆けてインジェクション化。それでも、動力性能は控えめだった。

アップデート後の内装も豪華と呼べるほどではなかったが、曲線美のスタイリッシュなファミリーカーとして、完成度は高かった。堅牢性も一線を画していた。生産数は、タイプ1へ及ばなくても。

オーナーの意見を聞いてみる

「このファストバックは、2006年に前オーナーから譲り受けました。1965年から稼働状態が維持されていて、1992年にはフロントフェンダーが新調されています」。フォルクスワーゲン・マニアのリッチ・オークリー氏が振り返る。

「再塗装されていますが、基本的にはオリジナル。走行距離は18万kmを過ぎたところです。恐らく、右ハンドルでは最後のファストバックでしょう。160km/hでも走行可能で、メカ的にはポルシェ912との共通性も高い。とても気に入っています」

フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)
フォルクスワーゲン・タイプ3(1961〜1973年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

「イグニッションスイッチの交換を控えています。当時物の部品を、400ポンド(約8万円)で手に入れたんです。1972年に父がビートルを買って以来、自分もフォルクスワーゲン・ファン。1947年式のビートルや、1952年式カブリオレも所有しています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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