絶妙な好バランス メルセデスAMG CLE 53 プロパフォーマンス(2) まるで小柄なベントレー?

公開 : 2025.09.24 19:10

3.0Lエンジンをワイドなボディで包むCLE 53 多彩なシャシー技術が標準 高品質な内装に有能なタッチモニター 頼もしい動力性能 乗り心地は硬め 自然な操舵感や回頭性 UK編集部が試乗

0-100km/h加速4.0秒 艷やかなサウンド

魅力的なボディに頼もしいエンジン。メルセデスAMG CLE 53のプロパフォーマンス仕様は、0-100km/h加速を4.0秒で処理する。2基のターボと電動コンプレッサー、9速ATと一体の電気モーターによって、たくましい中間加速を披露する。

艷やかなサウンドも好ましい。448psをイメージさせるほど、勇ましくはないが。アイドリングは一転して静かで、メータを見なければ回転中か気付かないほど。63ではなく53だから、主な競合はV6エンジンのアウディS5や直6のBMW M440iになるだろう。

メルセデスAMG CLE 53 4マティック+ クーペ・プロパフォーマンス(英国仕様)
メルセデスAMG CLE 53 4マティック+ クーペ・プロパフォーマンス(英国仕様)

9速ATはトルクコンバーター式で、デュアルクラッチほどの切れはない。しかし電気的なアシストと相乗し、普段使いではうっとりするような滑らかさを味わえる。BMWが採用するZF製社製8速ATの方が洗練され、変速も素早いとしても。

ブレーキはペダルの感触が頼もしく、効きは強力。回生ブレーキが介在するものの、制動力の立ち上がりは漸進的だ。ただし、ウェットで112-0km/hのフルブレーキを試したところ、制動距離は57.4m。アウディS5は、51.3mで停まっている。

乗り心地は硬め 自然な操舵感や回頭性

シャシー技術は、AMGへ期待通りの全部載せ。有能な四輪駆動システムに可変レシオステアリング、後輪操舵、アダプティブダンパーなどが標準で備わる。複数のドライブモードに加えて、お好みで個別に設定も可能。手元のダイヤルで、呼び出しも簡単だ。

筆者が試した限り、公道ではサスペンションはコンフォート・モードが好ましいと感じた。適度にタイトでフラットでありながら、充分にタイヤは屈伸してくれる。それでも乗り心地は基本的に硬めで、鋭い凹凸を通過すると落ち着きへ影響が出がちだった。

メルセデスAMG CLE 53 4マティック+ クーペ・プロパフォーマンス(英国仕様)
メルセデスAMG CLE 53 4マティック+ クーペ・プロパフォーマンス(英国仕様)

複雑なシステムだからか、ステアリングは個別に調整できない。ロックトゥロックは2回転以下でも、操舵感や回頭性は自然。直進性に優れ、切り始めの反応は穏やかで、徐々にクイックさが増していく。代償として、感触や一体感はやや乏しい。

基本は安定志向のマナー 後輪駆動モードも

AMGダイナミクスと呼ばれる、トルクベクタリング機能は新しい。ベーシック、アドバンスド、プロの他に、プロパフォーマンス仕様ではマスターの4モードが用意され、四輪駆動システムとトラクション/スタビリティ制御の動作が変化する。

とはいえ変化度は小さく、マスター・モードでも安定志向。ヘアピンカーブの立ち上がりでアクセルペダルを蹴飛ばすと、短時間ながらリアを外へ振り出せるが。

メルセデスAMG CLE 53 4マティック+ クーペ・プロパフォーマンス(英国仕様)
メルセデスAMG CLE 53 4マティック+ クーペ・プロパフォーマンス(英国仕様)

プロパフォーマンスで別に用意されるドリフト・モードは、実質的には後輪駆動モード。M4と異なり、選択が少し手間で、アンダーステア傾向にあり興奮度は控えめ。前が265、後ろが295という幅の、ハイグリップなタイヤも影響しているはず。

カブリオレでも、パフォーマンスはクーペへ肉薄。シャシー剛性の低下は殆ど体感できず、強い入力で僅かに響く程度だった。ステアリングの反応は高精度で、敏捷性も引けを取らない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

メルセデスAMG CLE 53 プロパフォーマンスの前後関係

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