100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(1) ニューファントムとファントム II 品質が醸成した名声

公開 : 2025.10.04 17:45

ニューファントム発売から100年 圧倒的品質が醸成した名声 大陸旅行へ準備万全な2代目 究極的プライベートカーといえた3代目 BMW傘下で誕生した7代目 UK編集部がザ・ロールスを振り返る

他を圧倒する品質が醸成した名声

ロールス・ロイスがニューファントムを発売したのは、100年前の1925年。それまでの20年近く、最新モデルの立場を堅持したのは、トゥエンティとシルヴァーゴーストだった。ブランドの名声は、技術進化以上に、他を圧倒する品質が醸成したものといえた。

ニューファントムは、後にファントム Iと呼ばれるが、技術的にはシルヴァーゴースト譲り。それでも、重要なアップデートは加えられていた。

ロールス・ロイス・ニューファントムと歴代のファントムたち
ロールス・ロイス・ニューファントムと歴代のファントムたち    マックス・エドレストン(Max Edleston)

実績を積んだ高耐久の直列6気筒エンジンは、排気量を7668ccに拡大し、スチール製のメインブロックは3気筒毎に2分割。整備性を高めつつ、1枚のオーバーヘッドバルブ・ヘッドで締結された。カムシャフトは、プッシュロッドとロッカーを介して駆動した。

先代譲りの技術 磨かれた操縦性

チャンネル材によるスチール製シャシーも先代譲りだが、剛性を高めるブレースを追加。リーフスプリングのサスペンションへ変更はなかったものの、スペインのイスパノ・スイザ由来の四輪ブレーキは、先進的といえた。

シングルプレート・クラッチへ伝わったトルクは、リアアクスル一体のトルクチューブへ収まるプロペラシャフトを回転。リジットアクスルながら、操縦性は磨かれていた。

ロールス・ロイス・ニューファントム(1925~1931年/北米仕様)
ロールス・ロイス・ニューファントム(1925~1931年/北米仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ホイールベースは、通常の3721mmかロングの3823mmという2種類。今回の車両は1929年式の左ハンドルで、ブリュースター社製のロンズデイル・ランドレー・ボディを纏う。ロングホイールベースは1243台が提供されたが、その1台だ。

シャシーの生産は英国中部のダービーの他、アメリカ北東のスプリングフィールドでも行われ、フロア中央のシフトレバーと3速マニュアルであることが、本国仕様との違い。各部の潤滑システムは、シングルショットへ簡略化されてもいる。

マイクロバスの重厚感 後席のためのクルマ

第二次大戦中はニューヨークで保管され、後に英国へ輸入。入念なレストアが施されている。ファブリックルーフを開くと、クロス張りのベンチシートが外界へ顕になる。寡黙な運転手へ身を任せ、エリートたちが摩天楼の合間を優雅に移動したに違いない。

エンジンは終始スムーズ。ペダルは一般的な配置で、Hパターンのシフトレバーは、丁寧に傾ければ静かにギアを繋げる。ステアリングはギア比が高く、速度域を問わず重い。

ロールス・ロイス・ニューファントム(1925~1931年/北米仕様)
ロールス・ロイス・ニューファントム(1925~1931年/北米仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

速度上昇は至って滑らかだが、英国の田舎道では、マイクロバスのような重厚感を滲ませる。1世紀を経ても、リアシートのためのクルマだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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