メルセデス・ベンツ 車内に「物理スイッチ」再導入 タッチ操作とのバランスに焦点

公開 : 2025.09.19 17:45

メルセデス・ベンツは、今後の新型車と現行モデルに物理的な操作スイッチを増やしていく方針を示しました。実際の使用状況を鑑みて、デジタル中心のインテリア設計を維持しつつ、操作性とプレミアム感を高めていく計画です。

購入者の使用状況を反映 現行モデルも対象に

メルセデス・ベンツは今後、デジタル中心のインテリア設計において、物理的な操作スイッチを増やしていく方針だ。ソフトウェア部門責任者のマグナス・オストベルグ氏がAUTOCARに語ったところによると、「物理ボタンの優位性を示すデータがある」という。

この設計方針は、まず新型GLCとCLAシューティングブレークのEVモデルから導入される。ステアリングホイールに多数のロッカースイッチ、ローラー、ボタンが配置され、このステアリングホイールが今後全モデルの標準装備となり、すでに販売中のモデルへの装着も計画されている。

メルセデス・ベンツ新型GLCのインテリア
メルセデス・ベンツ新型GLCのインテリア

デジタル優先のデザインを維持しつつ、物理スイッチの追加により操作性を高める狙いだ。

今月上旬にミュンヘン・モーターショーでAUTOCARの取材に応じたオストベルグ氏は、こう説明した。「物理ボタンが少ないCLAと、ローラーやボタンを復活させた新型GLCを見比べてみると違いがよく分かります。データから、ローラーや物理ボタンは特定の年齢層やユーザー層にとって非常に重要だということが判明しています」

「物理ボタンとタッチ操作のバランスは極めて重要です。実際に高頻度で使用される要素を分析した結果、物理ボタンの優位性がデータで示されました。だからこそ再導入したのです」

同氏の言うデータは、ソフトウェア定義車両(SDV)から得られたものだ。CLAはメルセデス・ベンツ初のSDVであり、新型GLCが2台目となる。

SDVは、無線ソフトウェアアップデートによる調整が容易なだけでなく、ドライバーのデータや使用状況を把握しやすいという利点もある。物理的な操作スイッチの一部を復活させるといった決定も、データに基づいて行うことができる。

ステアリングホイールのデザインも市場に応じて異なるものとなる可能性がある。例えば、欧州ではボタン操作が好まれる一方、アジアではタッチスクリーンや音声操作を好む傾向があるという。

オストベルグ氏は、今後のモデルではステアリングホイール以外の場所にも物理的な操作スイッチを増やすことを検討していると述べた。ただし、これはおそらくSUVに限定されるだろう。「大型車ではパッケージングの自由度が高く」、またSUVの購入者は「ボタンをより重視する」からだ。

メルセデス・ベンツは新型GLCに同社史上最大のスクリーン『MBUXハイパースクリーン』を導入したばかりだ。39.1インチ(約99.2cm)の幅でダッシュボード全体を覆っている。

デザイン責任者のゴーデン・ワーゲナー氏は、これがおそらくスクリーンの限界サイズで、「これ以上大きくすることはほぼ不可能です」と述べた。

ワーゲナー氏によれば、GLCのインテリアは「技術面でほぼSクラス並み」であり、デザイナー陣は現在、このデザインを上級モデルへどう発展させるかを検討中だという。

「このレベルのラグジュアリーを車内に実現できたのは素晴らしいことです。インテリアを見ていただければ、わたし達が成し遂げたことの素晴らしさがわかるでしょう。ですが、常に改善の余地はあります」

ワーゲナー氏は、次のレベルのラグジュアリーは高級感のある内装材だけでなくソフトウェアからも生まれると述べた。

「どうすれば、もっと豪華な魅力を与えられるでしょうか? アップルや競合他社を見ると、他社よりプレミアムに感じられるのはソフトウェアです。当社のソフトウェアも他社より高級感があると思います」

「こうしたクラフトマンシップこそが、メルセデスらしさを形作り、他社との差別化につながるのです」

メルセデス・ベンツはまた、音声コマンドを中心に、人工知能(AI)導入も進めている。音声コマンドは世界最大の市場である中国において重要な機能だ。しかし、オストベルグ氏は欧州の顧客も音声コマンドを利用すると述べ、CLAにおける音声コマンド使用率が従来の「3倍」に増加したとしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    役職:ニュース編集者
    ニュース編集者としての主な業務は、AUTOCARのニュースの方向性を決定すること、業界トップへのインタビュー、新車発表会の取材、独占情報の発掘など。人と話したり質問したりするのが大好きで、それが大きなニュースにつながることも多い。これまで運転した中で最高のクルマは、アルピーヌA110。軽快な動きと4気筒とは思えないサウンドが素晴らしい。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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