マツダMX-5(ロードスター)誕生秘話(1) MG TDと偶然の出会い 考えを構築したMGA

公開 : 2025.10.12 17:45

ファミリアやルーチェ、RX-7の技術を流用

ボブが続ける。「その出来事が、ミアータ(ロードスター)になるクルマを考え始めたきっかけですね」。510を購入してから10年後、自動車ジャーナリストとして働いていた彼は、マツダの技術者、山本健一氏と温めていたアイデアを共有したという。

2年後の1981年、彼はマツダが新設したカリフォルニアのデザインセンターへ登用。サルーンとピックアップトラックの業務の他に、後にロードスターとなる、FRスポーツカーのコンセプト開発も託された。

MGA ツインカム(1958〜1960年/英国仕様)
MGA ツインカム(1958〜1960年/英国仕様)

進展はゆっくりだったが、1984年にグレートブリテン島南部、ウェスト・サセックス州のインターナショナル・オートモーティブ・デザイン社へ、試作車の製作が発注される。当時のマツダ323(ファミリア)や929(ルーチェ)、RX-7の技術を流用して。

ちなみに同時期、マツダはFFとミドシップのツーシーター・スポーツの開発にも取り組んでいた。前者はMX-3(ユーノス・プレッソ)として量産化。後者はトヨタが一足先にMR-2を発売し、中止へ追い込まれている。

エラン・タイプ26の走行音を収録

FRのスポーツカーは、設計が本格化。マツダの開発主査だった平井敏彦氏は、理想的なサウンドをボブへ電話で確かめた。そこで彼が準備したのが、TVドラマシリーズ「アベンジャーズ」へ登場する、エラン・タイプ26の走行音を収録したテープだった。

「(女優のダイアナ・リッグ氏が演じた)エマ・ピールが運転するシーンで、BGMがないものを録音しました。シフトアップやシフトダウンなど、すべてのノイズを」

マツダMX-5 1.6i(ロータスター/初代/1989〜97年/英国仕様)
マツダMX-5 1.6i(ロータスター/初代/1989〜97年/英国仕様)

この続きは、マツダMX-5(ロードスター)誕生秘話(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・フォックス

    Simon Fox

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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