DS、新ラインナップで販売拡大 『No8』旗手に成長軌道へ 課題は「一貫性」

公開 : 2025.09.29 17:45

DSは欧州で新ラインナップによる成長を目指しています。クロスオーバー『No8』とハッチバック『No4』を筆頭にブランドイメージを刷新し、認知度を高め、販売台数の大幅な増加を目標としています。

最低目標は5万5000台

DSは、新製品ラインナップにより欧州市場での販売台数を大幅に増やすことを目指している。

9月25日に英国で開かれた記者会見で、DSのCEOに就任したばかりのザビエル・プジョー氏は、第2世代ラインナップを導入することで着実に成長軌道へ乗せ、より有力な量販プレイヤーとなることを目指していると述べた。

新型のフラッグシップモデル『No8』
新型のフラッグシップモデル『No8』    DS

プジョー氏は昨年の販売が減少したことを認めつつも、2024年と2025年を「移行期」と位置付け、ラインナップとブランドイメージの刷新を通じて、その後の成長につなげると説明した。

「これは成功の可能性を示す好調なスタートだったと思います。その後、新製品投入が少なかった第2段階に入りました。これは過去3~4年で直面した状況と同じで、販売台数に影響が出ました」とプジョー氏は述べた。

今後、DSは新型車投入の間隔がこれ以上長くならないように対策を講じる。新型のフラッグシップクロスオーバー『No8』とハッチバック『No4』が、ブランドの新時代の先駆けとなる。

「これらの新製品を基盤により、DSは再び成功できると確信しています」とプジョー氏は力を込めた。

2027年頃には、DS 3の後継モデルが登場する見込みであり、販売拡大に貢献すると期待される。

プジョー氏は「これまでの最大値を最小値にしなければならない」と述べ、過去最高の年間販売実績(約5万5000台)を新たな基準値とする姿勢を示した。具体的な販売目標については明言を避け、「わたしが販売台数を3倍または4倍に増やしたいと言えば、夢物語だと言われるでしょう」と語った。

販売拡大を実現する上で重要なのは、「ブランドが発するすべてのメッセージに一貫性を持たせ、整合性のあるものにすること」だという。

DSのCEOに就任して8か月、プジョー氏は自身の課題として「プレミアムブランドの信頼性を支える最高水準の品質」と「メッセージの一貫性と整合性」を挙げた。

プジョー氏は、DSは「成功事例」だとし、設立10年という比較的新しいブランドでありながら、70年前の初代シトロエンDSの歴史と遺産を継承している点を強調した。この初代DSが、新型No8のポジショニングやデザイン、ダイナミクスのキャラクターの源流となった。

高級ブランドの重要性と課題

以前、親会社ステランティスの元CEO、カルロス・タバレス氏の発言から、業績不振を理由にDSブランドが廃止または売却されるのではないかという「噂」が流れた。しかし、プジョー氏はそのような噂があることは認めながらも、「現実にはあり得ない」と断言した。

「DSは収益性の高いブランドです。ステランティス・グループに確実に貢献しています」と同氏は述べ、高級ブランドの重要性が増していることを強調した。

ブランドの源流となったシトロエンDS
ブランドの源流となったシトロエンDS

「市場の競争激化を考えると、そうした疑問が出てくるのも当然のことでしょう。ですが、仮にその疑問が提起されたとしても、単一のシナリオのみを検討すべきではないと思います。理由は単純です。欧州市場においてプレミアムセグメントは販売台数の25%、自動車メーカーの利益のほぼ40%を占めているからです」

「それにもかかわらず、自動車市場に大きな影響力を持つプレミアムセグメントで、自社に利益をもたらしているブランドを、競合他社がプレミアムブランドを推進している状況下で、即座に廃止すべきでしょうか?」

プジョー氏はまた、英国での販売台数が伸び悩んでいることに触れ、「プレミアムブランドは販売台数だけで評価されるべきではない」としながらも、ディーラーネットワークの収益性を確保するには一定台数の販売が必須だと述べた。

DSの英国担当マネージングディレクター、ジュール・ティルストーン氏はブランド認知度向上のために「やるべきことがある」、「課題はまだ解決していない」と認めた。

「DSを顧客の購入候補リストに載せることが、達成すべき課題です」とティルストーン氏は述べ、その実現に向けた「触媒」としてNo8を挙げた。No8の最大航続距離は750kmで、ほとんどの競合車を大きく上回る。

「航続距離が鍵です」と同氏は言う。「750kmという数字があれば、公共充電器への不安は消えます。自宅充電だけで済み、ガソリンスタンドや充電ステーションに行く必要がなくなるのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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