古きクルマ文化を物語る ウーズレー・ホーネット・スペシャル(1) 天へ響く6気筒

公開 : 2025.10.26 17:45

父が初めて購入したクルマ、ホーネット・スペシャル ローリングシャシーにセミオーダー・ボディ パワフルな直6エンジン 戦前のクルマ文化を物語るウーズレーをUK編集部が振り返る

父が初めて買ったクルマ ホーネット・スペシャル

筆者の父が初めて購入したクルマは、直列6気筒エンジンのウーズレー・ホーネット・シックスから派生した、ホーネット・スペシャルだった。自分が生まれる前に手放されたが、クルマへ情熱を注ぐきっかけになったと、生前にしばしば口にしていた。

金欠気味の技術者だった若き父は、中古の1933年式を改造。ベーシックな構造ながら、安価に軽快なスポーツカーを楽しんでいた。その血は、高純度で受け継がれたらしい。

5台のウーズレー・ホーネット・スペシャル
5台のウーズレー・ホーネット・スペシャル    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

エンジンは、戦前としては先進的なオーバーヘッドカム。倒産の危機を逃れモーリス傘下へ組み入れられたウーズレーは、モーリス・マイナー向けに4気筒ユニットを改良し、MG Mタイプなどに採用されていた。だが、6気筒の上質さと出力には叶わなかった。

走行可能なローリングシャシーを発売

1930年に発売されたホーネット・シックスの潜在能力へ、チューニング・ガレージやコーチビルダーが注目するのは時間の問題といえた。同年の4月には、ウーズレーの2ドアボディのまま、スポーティに改造を受けたホーネットが姿を表したほど。

複数の英国ブランドが、ハイ・カムシャフトやツイン・キャブレターへの交換を提案。スーパーチャージャーや、変速しやすいリモート構造のシフトレバーも開発された。

ウーズレー・ホーネット・スペシャル・ウィッティンガム&ミッチェル・ボディ(1935年式/英国仕様)
ウーズレー・ホーネット・スペシャル・ウィッティンガム&ミッチェル・ボディ(1935年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

他方、ホーネット・シックスのシャシーへ独自ボディを先んじて架装したのは、ロンドンのディーラー、ユースタス・ワトキンス社。空力特性を意識したラジエターをフロントに積んだ特別なボディが、アビー・コーチワークス社へ依頼されている。

僅かな改良でスポーティな「スペシャル」が作れると理解したウーズレーは、ホーネット・スペシャルという名で、エンジンなどが載った走行可能なローリングシャシーを準備。アップグレード・パーツを標準化し、1932年に175ポンドで発売している。

新デザインのラジエターに大径ヘッドライト

ホーネット・スペシャルのドラムブレーキは、通常より大径の直径12インチ。トランスミッションは、新開発の4速マニュアルだったが、変速時にギアの回転数を調整するシンクロ機構は非実装だった。

6気筒エンジンは、カムシャフトの駆動をチェーン化。高圧縮比のピストンと強化バルブスプリング、オイルクーラーが組まれ、ツインSUキャブレターが載った。

ウーズレー・ホーネット・スペシャル・ウィッティンガム&ミッチェル・ボディ(1935年式/英国仕様)
ウーズレー・ホーネット・スペシャル・ウィッティンガム&ミッチェル・ボディ(1935年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

クロームメッキ・トリムが中央を飾る新デザインのラジエターと、直径10インチのヘッドライトが、通常とは異なる表情を生んだ。ダッシュボード上の大きなスピードメーターも、ホーネット・シックスとの違いだった。

とはいえ、戦闘力が高かったわけではない。排気量は1271ccで、アマチュア・レースの1500cc以下規定には収まったが。剛性の低いスチール製シャシーやリーフスプリング・サスペンションも、意欲的な走りには不充分といえた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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