新世代デザイン日本初導入!新型シトロエンC3はどう描かれたのか?【デザイナー柳沢知恵さんに訊く】

公開 : 2025.10.20 11:45

4代目となる新型シトロエンC3は、日本に導入される車種では初めて、新世代のシトロエン・デザインを全面的に取り入れたモデルです。シトロエンでカラー&マテリアルを担当するデザイナーの柳沢知恵さんを森口将之が取材しました。

エクステリアは激変レベル

10月に日本でも発表された、通算4代目となるシトロエンのコンパクトカー『C3』は、日本に導入される車種では初めて、新世代のシトロエン・デザインを全面的に取り入れた。とりわけエクステリアは激変というレベルで、熱心なシトロエン・フリークからは複雑な感想も聞こえてきているようだ。

では実際にシトロエンのデザインに関わる人たちは、この変化をどう感じ、どう描いたのだろうか。カラー&マテリアルデザイナーの柳沢知恵さんが発表を機に帰国、取材に応じていただいた。

シトロエンのカラー&マテリアルデザイナーである柳沢知恵さんと新型C3。
シトロエンのカラー&マテリアルデザイナーである柳沢知恵さんと新型C3。    ステランティス・ジャパン

柳沢さんは、筑波大学大学院芸術研究科終了後、日産ルノーを経て、2015年にC4カクタスに惹かれてシトロエン入りした。

デザインの分野では近年、『CMF』が注目されている。『カラー・マテリアル・フィニッシュ』の3要素を示したもので、クルマではボディカラーやインテリアのトリムなどを決める立場になる。柳沢さんもこうした分野で活躍している。

日本ではフラッグシップの『C5X』の発表時にも帰国していたが、僕はその前、バルセロナで行われた先代C3の国際試乗会のときにお会いしている。つまりC3については2世代続けてCMFに関わっていることになる。

新しいシトロエン・ブランドのデザインについては、今年春にマイナーチェンジを受けたC4の日本発売に合わせて、チーフデザインオフィサーのピエール・ルクレール氏に取材した記事を、AUTOCAR JAPANで公開している。

柳沢さんは、彼が構築されたブランドデザインに基づいて描かれた新型C3のCMFを担当したというわけだ。

2CVのように愛される存在に

まず彼女が触れたのは、1919年にシトロエンが創業したときに掲げていたものを再解釈した、ダブルシェブロンをオーバルで囲んだ新しいエンブレム(ロゴ)だ。

「新しいエンブレムは、創業100年を記念して作られた『19_19コンセプト』とともに発表されたものですが、オーバルは斜めの面に置くと丸に見えてしまうので、垂直に配置するように心がけました。シルバーの部分には細いラインを入れて精緻に仕上げました」

柳沢さんが左手で持っているのが、新しいシトロエン・エンブレム。
柳沢さんが左手で持っているのが、新しいシトロエン・エンブレム。    ステランティス・ジャパン

エンブレム以外にも、ボディの各所にダブルシェブロン柄を入れたことも特徴。ホイールアーチもそのひとつだ。

先代C3で取り入れた2トーンカラーは、初期の頃から採用を考えていたとのこと。イメージカラーのブルーモンテカルロは、1960年代の2CVにあった色を再現したもので、2CVのように愛される存在になってほしいという気持ちを込めた。

前後バンパー下部のシルバーに光輝材を入れ、上質に見えるようにしたこともこだわりのポイントだ。

日本仕様ではC4に続いて採用されたカラークリップは、フランスではオプションでトリコロールやダブルシェブロン柄なども用意。モンテカルロブルーなどに装着されるオレンジは、新世代シトロエンの象徴と言える『オリ・コンセプト』のアクセントカラーを反映した。

「カラークリップの位置はエクステリアのデザイナーと話して決めました。C4はフロントバンパーとサイドシルに入れましたが、シトロエンはC3エアクロスやC5Xなど、リアクォーターで遊ぶ伝統があるので、カラークリップでそれを受け継ぎました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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