技術で克服できないものはない!やっとわかったアウディらしさ【日本版編集長コラム#52】

公開 : 2025.10.19 12:05

エンジンの存在が旧く感じる

続いて試乗したのは、SQ5スポーツバック。先に結論を書けば、Q5のベストバイはこの日は乗れなかった通常ボディのディーゼルだと思った(機会があれば検証したい)。

インターフェイスを始め、SQ5の美点はA6 eトロンと基本的に同じだ。ボディ形式が違うだけで、運転のしやすさは同様。ボディサイズも掴みやすく、「これもアウディだ」と直感できるものだった。

3L V6ターボを搭載するスポーツモデル、『アウディSQ5スポーツバック』。
3L V6ターボを搭載するスポーツモデル、『アウディSQ5スポーツバック』。    平井大介

しかし、今度はエンジンの存在を旧く感じてしまった。SQ5の3L V6ターボは確かにパワーもあり峠道で走りやすかったが、Sを名乗るほどはエンジンがドライバーに主張をせず、あまり必要性を感じさせなかった。それよりはBEVのほうが、アウディの目指す方向と合致していて合点がいく。もしくは、燃費のいいディーゼルのほうがわかりやすい。

また、スポーツバックというクーペSUVのボディ形式も中途半端に感じた。後部座席の広さが十分であることは強調しておきたいが、どこかアウディの目指す方向と異なる気がするからだ。また、1058万円という価格を見た時に、「これなら1012万円のA6 eトロンのほうがいい」と思ってしまった。

ちなみに仮に同じスポーツバックだとしても、普通のQ5はガソリンモデルが795万円(Q5は760万円)、ディーゼルモデルが823万円(同788万円)だ。Q5は新規顧客が多いそうだが、これなら手を出しやすいだろう。世界的に売れているカテゴリーに対し、商品力は十分にあるように感じた。

その乗りやすさに癒される

2台の試乗後、会場に用意されていた『A5アバントTFSIクワトロ150kW Sライン』にも少しだけ乗ってみた。そして試乗して数分足らずで、私は車内でこう呟いてしまった。

「ああ、これだ……」

会場に用意されていた『アウディA5アバントTFSIクワトロ150kW Sライン』にも試乗。
会場に用意されていた『アウディA5アバントTFSIクワトロ150kW Sライン』にも試乗。    平井大介

その日の私は正直、疲れていた。そして、その乗りやすさに癒されてしまったのだ。

2L直4ターボのガソリンエンジンは、いい意味で存在をほとんど感じさせないもので、車重1820kgは軽くないが、それまで乗った2台に比べると軽快さもある。車幅1860mmもあるのにクルマを小さく感じるし、運転していて押しつけがましい雰囲気が全くないのもいい。

「ディーゼルはラインナップされていないのか……。あればベストバイな気がするのに惜しいなぁ。…………ああ、やばい、やばい、やばい!」

ここでの『やばい』は、706万円の試乗車を買えるか真剣に考えそうになったという意味で、少なくとも疲れた身体に随分と沁みてしまったのである。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

日本版編集長コラムの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事