911に迫った直線加速 BMW 2002 ターボ 小さなMの魔力(1) 見違えた優雅なクーペ

公開 : 2025.12.27 17:45

強い逆風でラインオフは僅か1672台

オプションで5速も選べたが、これは標準の4速。シフトレバーのストロークは短いものの、感触はやや曖昧といえる。極初期のターボエンジンながら、パワーデリバリーは想像以上にリニア。ブースト圧が高まるまでは、若干のダルさはあるけれど。

4000rpmへ引っ張るとサウンドが変化し、4500rpmから打ち出されるような加速が始まる。ステアリングは、ウォーム&ローラー式ラックの遊びが若干多いとはいえ、信頼感を生むフィードバックは充分。速度上昇とともに、重い手応えは軽く転じる。

BMW 2002 ターボ(1973〜1974年/欧州仕様)
BMW 2002 ターボ(1973〜1974年/欧州仕様)    ジェイソン・フォン(Jayson Fong)

細いピラーが囲う急な角度のフロントガラスと、獰猛さが一致しない。グリップ力は充分あるが、幅185のタイヤはドライでもむずがる。コーナーには計画的に飛び込む必要はあっても、優秀なシャシーの実力を引き出せば夢心地。

驚くほどの速さではないとしても、颯爽とした走りへ惹き込まれる。1975年の生産終了までにラインオフした2002 ターボは、僅か1672台。オイルショックを発端としたドイツでの強い逆風がなければ、多くの人がターボの面白さを味わえたはず。

この続きは、小さなMの魔力(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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