20周年を迎えたアストン マーティン・ヴァンテージの現在地【日本版編集長コラム#60】

公開 : 2025.12.14 12:05

冬のオープンカーの醍醐味

お借りした数日はかなりの寒さでオープンにするのは気が引けたが、コートを着込みエアコンとシートヒーターを最大にし、短い距離ではあるが走ることができた。ある意味、冬のオープンカーの醍醐味ではある。

サイドビューからもわかるようにウインドウの下端はかなり高く、包み込まれるようなコクピットでの安心感はかなりのものだ。それは開放感とはトレードオフの関係にあるが、剛性を考えると理解はできる。車重は60kg増に過ぎず、走っている限り重さや剛性のネガを感じることはない。

サイドビューからもわかるように、ウインドウの下端はかなり高くなっている。
サイドビューからもわかるように、ウインドウの下端はかなり高くなっている。    平井大介

惜しいのは、せっかくのV8サウンドがオープンでもそれほど伝わってこないこと。スポーツ+モードでレブリミットまで回してみたが、7000rpmくらいでリミッターにあたり、音質はよいのだが伸びと音量が少し足りない印象だ。書き方を変えるなら、もっと『轟』を聴かせて欲しいと思う。音量規制的には難しいのかもしれないが……。

それでもやはり寒かったので、早々にルーフを閉じた。50km/hまでなら開閉が可能で、時間はわずか6.8秒。プレスリリースには『現在販売されている自動開閉式ルーフ装備車の中では最速』と書かれているが、確かにあっという間の印象だ。ルーフは8層もの断熱材で構成されていて、クローズドで走っている分にはクーペと変わりない。

GTスポーツカーになろうとしている

些細な話をすれば、ナビの音声が外国人が話す片言の日本語みたいだったり、接近物に反応するセンサーが何もない信号待ちで突然鳴ったり、ブルートゥースで繋いでいた電話の音声がいきなり変な音になったりと、主にインターフェイス部分で気になったことがいくつかあった。

しかし、結局ワインディングでは試すことができなかったが、V8らしくトルクフルだから長距離は苦にならない印象で、パワーアップはしても安心感を持っているあたりから、アストン マーティンらしいGTスポーツカーになろうとしている現行ヴァンテージの姿が浮かんでくる。もしかすると、その方向性が明確になるのは次世代ヴァンテージなのかもしれない。

アストン マーティン・ロードスターのスターティングプライスは2860万円となる。
アストン マーティン・ロードスターのスターティングプライスは2860万円となる。    平井大介

今や電動化されていない純粋なV8エンジンスポーツカーとして現行モデルは希少価値があり、何よりもそのスタイリングは実に魅力的だ。サテンイリデセントサファイアと呼ばれるアストン マーティンでは珍しいマットブルーも、華美すぎない英国らしさに感心した。

だから電動化か非電動かわからぬ未来を待つよりは、現在を楽しむべきだろう。その対価として、『アストン マーティン・ロードスター』のスターティングプライス2860万円をどう考えるか。判断はカスタマーに委ねたい。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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