シャシーはポルシェ356の技術者 ジョウェット・ジュピター(1) 前端に1.5L水平対向4気筒
公開 : 2025.12.28 17:45
ポルシェ356の技術者がシャシーを手掛けたジュピター 前端に載る1.5L水平対向エンジン ラウンジのような空間 ル・マンで3年連続クラス優勝 UK編集部が知られざるロードスターをご紹介
シャシー設計はポルシェ356の技術者
小さなジュピターは、グレートブリテン島中東部、ヨークシャー州ブラッドフォードに構えたジョウェット社のイメージを一新させた。設計は常識を覆すもので、少なくないレースで輝かしい勝利を収めた。今回お集まりいただいた3台が、その生き証人だ。
ジュピター誕生を促したのは、デザイナーのジェラルド・パーマー氏による4ドアモデル、ジョウェット・ジャベリン。オーバーヘッドバルブ・エンジンにモノコックシャシー、独立懸架サスペンション、流線型のボディなど、先進的な内容にあった。

この技術へ、レーシングドライバーのアンソニー・ヒューム氏は着目。1949年に、同社へスポーツカーのアイデアを提案している。シャシー開発のため、オーストリアの自動車技術者、ロバート・エベラン・エバーホルスト氏が招かれた。
エバーホルストは、フェルディナンド・ポルシェ氏のもとでアウトウニオンへ関与。戦後はポルシェのグミュント工房へ合流し、リアエンジンの356の設計に携わった。
フロントに載る1.5L水平対向エンジン
モノコック構造の改変は、少量生産では難しいとエバーホルストは判断。鋼管フレームのシャシーを設計し、1.5L水平対向4気筒エンジンが前端に積まれた。ハイリフトカムに高い圧縮比、ツインキャブレターなどで、60psの最高出力が引き出された。
サスペンションは、前後ともトーションバーがスプリングを兼務。356と異なり、アンチロールバーも備わった。

スタイリングは、ジョウェット社に在籍したデザイナー、レグ・コーナー氏。筋肉質なフェンダーラインと、潰れたようなノーズを描き出している。フロントセクションは一体型のクラムシェル構造で大きく開き、整備性にも配慮された。
後端へスムーズに絞られるラインは、誰の目にも美しい。フロントの個性的な表情も、魅力的といえる。だが、水平対向エンジンであることを考えると、ボンネットのラインは不自然に高いかもしれない。
スポーティなボディにラウンジのような空間
イングリッシュ・ホワイトの見事な1台は、ガース・ライト氏が所有する完璧な状態の1953年式。なだらかにテールが傾斜し、後ろから眺めるとダッシュボードが丸見え。ソフトトップを閉めると、タイトなキャビンが強調される。
MG TDの2倍という新車価格を表すように、装備は充実。リアフェンダーの前には、磨かれたプロテクターが備わる。艶深いダッシュボードは、木目が美しい。この頃の英国製ロードスターとしては珍しく、サイドウインドウが上下に開閉する。

シガーライターとラジオも標準。ベークライト・ノブのスイッチがボディ色と調和する。スポーツカーらしいプロポーションながら、上品なラウンジ風の空間が生み出されている。コラムシフトも、レースよりツーリング重視であることを物語る。






















































































































