ル・マンで3年連続クラス優勝 ジョウェット・ジュピター(2) 友人共作のクラシック・レーサー

公開 : 2025.12.28 17:50

ポルシェ356の技術者がシャシーを手掛けたジュピター 前端に載る1.5L水平対向エンジン ラウンジのような空間 ル・マンで3年連続クラス優勝 UK編集部が知られざるロードスターをご紹介

ル・マン3年連続クラス優勝の無名ブランド

果たして、ロバート・エリソン氏は1952年のラリー・モンテカルロへ挑むが、雪深い谷底へ落ちてしまう。ウッドフレームを持つジョウェット・ジュピター・クーペのアルミ製ボディは、強固だったが重すぎた。

戦いを終えたジュピター・クーペは、英国へ帰郷。1985年に、現オーナー、シーラ・リッグ氏の父が購入している。

ジョウェット・ジュピター・クーペ(1952年式/英国仕様)
ジョウェット・ジュピター・クーペ(1952年式/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ジュピターは、モンテカルロ以外でも存在感を示した。1951年のリスボン・ラリーでは、別のマシンが優勝。同年のRAC TTレースでは、ノーマルのジュピターがクラス優勝し、1952年の英国RACラリーでも勝利している。

1950年から1952年のル・マン24時間レースでは、3年連続でワークスチームがクラス優勝を果たすなど、無名といえたブランドは高い戦闘力を誇った。この歴史へ感化され、今でもヒストリックカー・レースへ挑むマニアは少なくない。

ACエースに近いシャシーへ着目

その1人が、リチャード・ゲイン氏。ジュピター・オーナーズ・オート・クラブのメンバーだが、3台のジュピターのほか、サルーンのジャベリンを2台所有するなど、筋金入りのジョウェット・マニアといえる。

レースへ挑戦するようになったのは、2010年。「ル・マン・クラシックにACエースで参加していた友人が、価格の高騰で売却し、別のマシンを探していました。そんな時、エースへ近いシャシーをジュピターが持つことに、彼が気付いたんです」

ジョウェット・ジュピター(1953年式/オリジナルレーサー)
ジョウェット・ジュピター(1953年式/オリジナルレーサー)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

「そこで、レーサーを作れないか、という話になりました」。ゲインは、最初期の試作車を含む、3台のジュピターを購入。その友人、デイブ・ハリス氏とチームを組み、ライト・ブルーの1953年式マシンを仕上げたという。

オーナーズ・クラブのメンバーから、新しいアルミ製クランクケースを調達。コンロッドとピストンは特注し、水平対向4気筒エンジンから116psが引き出された。4速MTは、コラムからフロアシフトへ変更。オーバードライブも追加されている。

ミュルザンヌで190km/h超えのレーサー

ハリスは、軽量化にこだわった。ボルトの余長部分は、のこぎりで切断されている。「それをバケツに集めて測ったら、2kgもありました」。と説明する。本来はスペアタイヤが収まるリア部分は、揚力を抑えるべくエアアウトレットが開けられた。

フロントノーズには、良く冷えそうなワイヤーメッシュ。軽さを求めて、ドアの内張りはない。ヘッドライトのテープが、サーキット帰りなことを主張する。

ジョウェット・ジュピター(1953年式/オリジナルレーサー)
ジョウェット・ジュピター(1953年式/オリジナルレーサー)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

果たして、参戦4度目を数えるル・マン・クラシックのミュルザンヌ・ストレートでは、190km/hを超えるそうだ。他にも、スパ・フランコルシャンやグッドウッドでのイベントにも、意欲的に挑んでいるとか。

「操縦性はとても良いです。フロントヘビーなので良くなさそうですが、カーブでのスタンスはニュートラル。レーシングタイヤのまま、アクセルでラインを調整できます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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