ポルトガルが第二の故郷? MGA 1600で楽園の道へ(1) 夫妻が始めたロードスターの貸出し

公開 : 2025.08.16 17:45

先代から多くの技術を継承したMGA 第二の故郷はポルトガル? トルクが太い後期の1600 低く唸るBシリーズ 小気味良いロードスターにピッタリのドライブルートを、英国編集部が巡る

MGAの第二の故郷はポルトガル?

欧州の西、ポルトガル北部での自動車旅行は、英国人にとって困難な計画ではない。フィアット・ディーノ・スパイダーを所有し、ヴィンテージ・ツアーズという新ビジネスを立ち上げたハウクス夫妻は、東欧ブルガリアも負けじと素晴らしいと主張するが。

そんな旅へ選ぶべきクルマは?という問いに、夫妻は迷わずMGAを推す。グレートブリテン島中南部、アビンドン・オン・テムズ生まれの小さなロードスターは、渋いパブの前が似合う。だが、第二の故郷はポルトガルだと表現したいほど、ハマるらしい。

MGA 1600(1958~1960年/欧州仕様)
MGA 1600(1958~1960年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

1950年代後半からの10年ほど、同国の市場で英国車は約15%のシェアを占めていた。温暖・乾燥した気候と、気に入ったクルマを長く乗るという文化が掛け合わさり、古いブリティッシュ・スポーツの残存率はかなり高い。

そしてポルトガルには、欧州最高峰のドライブルートが伸びる、ドウロ自然公園がある。ヴィンテージ・ツアーズは、英国製のクラシック・ロードスターを5台購入。この土地での自動車旅行を楽しんでもらうため、レンタルを始めた。

MG Tタイプと似たステアリングの印象

900年の歴史を持つ町、ポルトガル北西のポンテ・デ・リマで、筆者はハウクス夫妻と待ち合わせた。町名の由来となったローマ時代の橋梁へ到着すると、お借りするアイリス・ブルーに塗られたMGA ロードスターが停まっていた。

夫のマティスは、シャリオット・レッドが眩しいMGAに乗っている。出発する前に彼の助手席へ座り、町内の観光名所を案内してもらう。

MGA 1600(1958~1960年/欧州仕様)
MGA 1600(1958~1960年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

MGAの運転は初めてだった筆者だが、MG TタイプとMGBには乗り慣れている。初見といえそうな部分は殆どない。見た目は後者へ近いが、ステアリングホイールを握ってみると、前者の記憶と重なる。

ステアリングラックは、Tタイプから流用されている。ダイレクトでクイックで、手のひらへ路面の凹凸が鮮明に伝わる。重さの加減も似ている。良くも悪くも、ここまでフロントタイヤを直接的に操っている感覚を得られるモデルは多くない。

短い開発期間 先代から多くの技術を継承

確かに、MGAは先代から多くの技術を継承している。とはいえTタイプの最終仕様、TFのシャシーへ新しいボディを載せただけだと、表現するのは正しくない。

最も大きな違いは、キャビンを囲うようにアウトリガーが伸び、シャシーの上ではなく、内側へドライバーが座るようになったこと。当時のアメリカ人は、「ペリフェラル」とこのフレームを呼んだ。

MGA 1600(1958~1960年/欧州仕様)
MGA 1600(1958~1960年/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

開発期間は短かった。計画は早期に立ち上がったものの、実行は何年も先送りされた。サスペンションはTFと同じ。前側は独立懸架式にコイルスプリングで、技術者のアレック・イシゴニス氏が1938年のサルーン、MG YA用に開発したものだ。

シフトレバーの若干渋い動きは、1950年代らしい。ゲートの間隔が狭く、2速へのシフトダウンは僅かに左側へ力を込めることになるが、傾けすぎるとバックに入ってしまう。少しコツがいるとはいえ、それ以外の変速は難しくない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

MGA 1600で楽園の道への前後関係

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