ジャガー「タイプ00」市販版プロトへ初試乗 外界との隔離性に唸る 3モーターで1000馬力

公開 : 2025.12.25 18:05

外界との隔離性に唸る 100mで実感の洗練度

テストコースへの接続道で、外界との隔離性に唸る。不気味なほど、静かで滑らかだ。コンクリートの大きな継ぎ目でも、揺れは皆無。高剛性のシャシーに有能な可変式エアサス、低い着座位置の相乗効果だろう。

コース上でフル加速。僅かにフロントノーズを持ち上げつつ、路面へ吸い付きながら、音もなく凄まじい速度上昇が始まる。コーナーでは、僅かなロール。前後のピッチングも、エレガントな振る舞いにある。洗練度の高さを、最初の100mで実感した。

ジャガーの次世代グランドツアラー(市販版タイプ00/プロトタイプ)
ジャガーの次世代グランドツアラー(市販版タイプ00/プロトタイプ)

そのまま加速を続け、240km/hへ。安定性に変わりはなく、助手席のベッカーと穏やかに会話できる。ボディを覆う偽装ラッピングが作る風切り音を、彼が詫びる。

車重は2.5t前後あるはずだが、1000馬力だから、0-100km/h加速は3秒台でこなすはず。160km/h以上でも、勢いは衰えない。ポルシェタイカンに似た、2速ATが組まれているのかもしれない。余剰的なパワーこそ、ブランドの価値だと彼は口にする。

傑出した能力を理由に欲しくなる

路面が荒れたルートへ。以前にランドローバーレンジローバーで走ったことがあるが、静寂性と衝撃吸収性、姿勢制御はそれを凌駕する。筆者の経験では、過去最高の処理能力ではないだろうか。

強烈なインパクトを、このグランドツアラーは筆者の心へ残した。結論を導くには時期尚早すぎるが、ジャガーが生み出そうとしているモノの、可能性を確信できた。動力性能を抜きに、傑出した能力を理由に欲しくなるクルマが、誕生するように思う。

ジャガーの次世代グランドツアラーと、開発責任者のマット・ベッカー氏(右)、筆者のスティーブ・クロプリー(左)
ジャガーの次世代グランドツアラーと、開発責任者のマット・ベッカー氏(右)、筆者のスティーブ・クロプリー(左)

ジャガー上層部のロードン・グローバー氏は、「極めて魅力的で憧れるクルマ」を作りたいと説明する。そのゴールへ向けて、正しい道を歩んでいることは明らかだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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