新型車発表会の裏側 メーカーとジャーナリストは何をしている?(前編) リアルイベントが重要なワケ UK編集部記者の視点

公開 : 2026.01.12 11:25

新型車のデビューは、自動車ジャーナリストにとって最もワクワクする瞬間です。メーカーはなぜ発表会を重視するのか? これまで記者にとって最も印象的だったイベントは? UK編集部が発表会の舞台裏について紹介します。

現場での足を使った取材

午前5時30分、部屋に目覚ましのベルが鳴り響いている。パリ郊外のどこかの見知らぬホテル。筆者は発表会場へ向かうシャトルバスに乗るため、無理やり体を動かしてカフェインを摂取しようとしている。

なぜ、こんなところにいるのか? AUTOCARに掲載される記事の裏側では、新型車発表会の日時と場所、車種名、出席者リスト、そして報道解禁時期が細かく管理されている。

新型車発表会に記者がどう向き合っているのか、ルノー・トゥインゴのイベントを例に紹介しよう。
新型車発表会に記者がどう向き合っているのか、ルノートゥインゴイベントを例に紹介しよう。

雑誌、ウェブサイト、ソーシャルメディアの各ニュースセクションを調整する作業は、蜘蛛の巣のような複雑な組織体制で成り立っている。筆者のようなスタッフには、現場での足を使った取材が割り振れられるのだ。

AUTOCARにとって「リベール(reveal)」とは、新型車の静的なお披露目を指す。一方「ローンチ(launch)」とは、そのモデルを実際に運転できるチャンスであり、リベールのしばらく後にやってくる。

ジャーナリストが各イベントに割り当てられると、関連する自動車メーカーの広報部門からメールが届く。パスポート情報、食事の要望(何でもいただきます)、空港駐車場の利用希望(はい、希望します)を尋ねる内容だ。

イベント前には編集部内で打ち合わせが行われる。出席する企業幹部からニュースを引き出す方法、記事の「フック」となる要素、SNS用に面白い動画を撮影できるかどうかなどについて議論するのだ。

会場へ向かう飛行機の中でそれらを反芻しながら、クルマのドアをバタンと閉める様子を撮影してオスカー賞を獲る夢を見る。ホテルに着き、食事を済ませて寝る準備が整う頃には、もう真夜中だ。

「学生時代」を思い出す記者会見

翌朝、バスでラッシュアワーの危なっかしい渋滞を抜け、8時には大都市郊外のスタジオに現地入りする。

短い休憩を取ってから、イベントに臨む。各国の記者たちが学生時代のようにグループに分かれて交流する中、ノートパソコンを開き、片手でタイピングしながら、もう片方の手でペイストリーを頬張る者もいる。

記者団に新型ルノー・トゥインゴを紹介するローレンス・ファン・デン・アッカー氏。
記者団に新型ルノー・トゥインゴを紹介するローレンス・ファン・デン・アッカー氏。

メールを数通送り終えるかどうかのタイミングで、記者たちはメインの会見場へと移動する。そこではルノーの上級幹部たち(今回の主役である新型トゥインゴを披露しようとしている面々)が待ち構えていた。

ここでもまた、学生時代に戻ったような気分になる。少し居心地の悪いベンチに背筋を伸ばして座り、校長先生の話に耳を傾けていたときのことを思い出す。今日の先生はルノーのデザイン責任者、ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏だ。

いつもの形式ばった流れとは異なり、ヴァン・デン・アッカー氏は記者たちを車両のそばへ招き、歩きながら主要な特徴を説明した。彼は、コンセプトカーの主要なデザイン要素を現実的な使用シーンに配慮しつつ踏襲できた点を誇りに思っており、フロントとリアバンパー側面の無骨なプラスチック部品はパリの駐車事情に最適だと冗談を飛ばした。

その後、記者団からヴァン・デン・アッカー氏とルノーへの質問攻めが始まった。最高のコメントを引き出せるかどうかを競い合うゲームのようだ。質問の目的は、与えられた資料以上の情報を記事に加えることだ。開発秘話、市場への影響、そして理想的には次期モデルのスクープ情報などである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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