EV充電速度を3分の1に 革新的なバッテリー冷却技術、各ゾーンを個別制御 英国スタートアップが開発
公開 : 2026.02.05 07:05
英国のスタートアップ企業ハイドロヘルツが開発した『デクトラバルブ』は、EVの急速充電速度を3分の1に短縮するとされています。バッテリーの熱を均等に分散させて冷却性能を高め、航続距離も延長できるとのこと。
急速充電をさらに高速化 航続距離延長も
缶ジュースほどの大きさの新たな発明品が、EVバッテリー技術に革命をもたらし、充電時間を劇的に短縮すると謳われている。
英国のスタートアップ企業ハイドロヘルツ(Hydrohertz)が開発した特許取得済みの液体冷却技術『デクトラバルブ(Dectravalve)』は、容量100kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを350kWの出力で10%から80%まで充電する時間を、従来の30分からわずか10分に短縮できる。

ウォーリック大学傘下の研究機関であるウォーリック・マニュファクチュアリング・グループ(WMG)による試験で実証された。
この技術をEVに搭載し、電費を5.5km/kWh(市販車で一般的な数値)と仮定した場合、コーヒーを一杯飲む間に約390kmの航続距離を追加できる計算だ。
ハイドロヘルツ社はこのシステムについて「驚くほど費用対効果が高い」と述べ、バッテリーパックを新規開発するコストのほんの一部で済むとしている。
走行中にもメリットがある。バッテリーセルが最適温度で動作するため効率性が向上し、最大10%の航続距離増加(中型EVで40~50km相当)を実現するという。
ゾーン制御でセル温度を最適化
ほとんどのEVバッテリーには冷却チャネルが内蔵されているが、急速充電や超急速充電時には、内部温度を低く保ち、全セルに温度を均等に分散させるのが難しい。
ハイドロヘルツ社のエンジニアによれば、通常、温度は摂氏56度まで上昇し、場合によってはパック全体の温度差が最大12度に達することもあるという。セル温度が50度を超えるとセルの損傷や寿命低下を招くため、充電速度を落とさねばならず、充電時間が長くなる。

これに対し、WMGでの試験では、最も高温のセルでも44.5度未満に抑えられ、パック全体の温度差もわずか2.6度だった。
バッテリーパックの設計はメーカーによって異なるが、ハイドロヘルツ社のデクトラバルブ技術は冷却液の流れを制御し、パック全体で均一かつ効果的な冷却を維持する。
例えば、既存のバッテリーにはパック全体を4つのゾーンに分割し、それらを一括制御しているものもある。デクトラバルブを用いれば、各ゾーンの温度を個別に制御し、温度を低下させつつ均一に分布させることができる。16個のモジュールで構成されるバッテリーの場合、4モジュールずつ4つのゾーンに分割でき、デクトラバルブが4つの冷却回路を個別に制御する。
近年、EVバッテリーの構造が変化し、従来のモジュール式からセルを個別設置するセル・トゥ・パック方式やセル・トゥ・シャシー方式への移行が進む傾向にあるが、この場合は「レインボー冷却」と呼ばれる設計で対応する。冷却回路を同心円状に重なり合うように配置するのだ。冷却回路が4つあるとすると、1つ目の回路はバッテリーパックの最外周を走り、次の3つはバッテリー中心部に向かって順番に配置される。
EVの充電時間を大幅に短縮する可能性を秘めたデクトラバルブだが、その名称は生き物に由来する。エビなど10本脚の甲殻類を指すラテン語「デカポッド(decapod)」と初期の10ポート設計が似ていたこと、そして他社製品より優れた能力を示す「エクストラ(extra)」に「バルブ(valve)」を組み合わせた造語である。


































