【現役デザイナーの眼:日産ルークスと三菱デリカミニ】軽スーパーハイトワゴン『カーデザインの3重苦』を見事に克服

公開 : 2026.03.23 12:05

道具感と親しみやすさを突き詰めたデリカミニ

一方のデリカミニは、ルークスと同じ基本ボディを使いながらも、より明確に『道具感』を打ち出したモデルです。旧型でもアウトドアテイストの強いデザインが特徴でしたが、新型ではその方向性がさらに磨かれています。

特徴的な半丸目のヘッドランプはアイコンとして継承されつつ、わずかにサイズアップし、印象としてはややマイルドになりました。一般的にSUV系のモデルチェンジでは、より力強く、威圧感のある表情へと進化することが多いですが、デリカミニは敢えて親しみやすさとのバランスを取ったように見えます。この点はデザイナーとして興味深い判断ですね。

絞り込まれた前後バンパー下端やアーチ周りの黒色部により、ちゃんとSUVのデザインになっているデリカミニ。
絞り込まれた前後バンパー下端やアーチ周りの黒色部により、ちゃんとSUVのデザインになっているデリカミニ。    三菱自動車

また、今回のモデルでは、ボンネットとフロントフェンダーのパネルがそれぞれ専用部品になっており、ルークスがシンプルで上質な方向に振られているのに対し、デリカミニはよりラギッドでアウトドア志向の強いキャラクターを際立たせています。

ボクシーで道具感あるエクステリア全体を見ると、ひょっとしたら今回はデリカミニを優先させてデザインしたのかもしれません。どちらにしても、異なるコンセプトの車を見事に作り分けた手腕が見事ですね。

軽の枠を超えるインテリアの完成度

インテリアもこの2台の大きな魅力のひとつです。まず、大型ディスプレイをふたつ並べたレイアウトが採用され、軽自動車の枠を超えた上級感を演出。また中央部には表皮を巻いたパネルが使われ、大型トレイも設けられるなど、機能性と質感の両立が図られています。

シフトはオーソドックスなレバータイプを採用していますが、直感的に操作できる点で実用性は高く、日常使いにおいてはむしろ合理的な選択に感じられます。

デリカミニのインテリア。シートファブリックの質感やスマートなディスプレイまわりなど、従来の軽自動車的なイメージはありません。
デリカミニのインテリア。シートファブリックの質感やスマートなディスプレイまわりなど、従来の軽自動車的なイメージはありません。    三菱自動車

さらに注目したいデザインが、インパネ上部がピラーを伝って天井まで回り込むモチーフです。実車ではキャビン全体を包み込むような印象を生み出しており、空間としての一体感を演出。過去にあまり見られなかったアプローチで、デザイン的にも新鮮なポイントです。

基本構成は両車共通ですが、シート素材などでキャラクターの違いが表現されており、ルークスは上質さ、デリカミニは上質でありながらアウトドアフィールも感じさせるバランスも好印象です。

特にデリカミニの最上級グレードは約295万円と、軽自動車として最も高価格帯に位置しますが、デザイン的にも装備と質感がこれまでの軽自動車から大幅に上がりました。

様々な制約の中でここまで完成度を高めてきた点が、デザイナーにとって大変参考になるクルマです。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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