シェルビー・コブラ 289 MkII(1) 空調付きガレージで半世紀 走行僅か2万4890km
公開 : 2025.10.18 17:45
走行距離2万4890kmのスレンダーなコブラ 289 アメリカ縦断の旅へ出た初代オーナー 21世紀まで空調の効いたガレージで保管 ACエースの俊敏さは失わず UK編集部が貴重な1台へ試乗
走行距離2万4890km スレンダーなMkIIの美貌
リアの小ぶりなリッドを開くと、シルバーのシェルビー・コブラ 289 MkIIが特別な1台だとわかる。そこへ収まるソフトトップは、黄ばんだ新聞紙で包まれている。そっとめくると、1970年の日付けが見える。半世紀以上、使われていないのだろう。
初代オーナーのロバート・リンダウアー氏は、自動車雑誌「カー&ドライバー」の1965年7月号で、このコブラの購入希望者を募った。1969年にも再び。当時は、読者による売買希望欄が存在していたのだ。しかし、買い手は現れなかった。

その結果、キャロル・シェルビー氏が手掛けたロードスターは、素晴らしい状態で21世紀を迎えることができた。マニア間では「リンダウアー・コブラ」として知られる1台で、走行距離は2万4890kmでしかない。
コブラと聞くと、広がったフェンダーラインにビッグブロックのV8エンジンを積んだ、427を思い浮かべるかもしれない。だが、ベースとなったACエースへ近い、スレンダーなコブラ 289 MkIIの美貌も素晴らしい。シルバーの塗装も、オリジナルだという。
コルベットから乗り換えアメリカ縦断の旅へ
このコブラは、アメリカのNASAで燃料電池と極低温工学を研究していたリンダウアーが、1964年7月に南西のフロリダ州で購入。走りへ納得した彼は、1か月後に北部を目指す旅行へ出発している。
新人だった彼が、高性能なロードスターを新車で購入できたのだから、手当は充実していたのだろう。その前には、1963年式シボレー・コルベットへ乗っていたのだから。

彼が最初に向かったのは、開催中だったニューヨーク万国博覧会。数か月前に発表された、初代フォード・マスタングが展示されていたからだった。同じ289cu.in(4.7L)のV8エンジンを積んだポニーカーは、コブラの半額で購入することができた。
更に北上し、マサチューセッツ州の東端、ケープコッドを訪問。そこから西へ進路を変え、両親が暮らすシカゴを訪ねている。驚くことに、彼が旅行で使用した地図は、今でも車内に残されている。ペンで記されたグリーンのラインは、彼が辿ったルートだ。
21世紀まで空調の効いたガレージで保管
暑い8月に、ロードスターでアメリカを縦断したリンダウアーは、挑戦心の強い人物だったといえる。同時に、とても几帳面でもあった。6400kmに及ぶ行程で給油した領収書は、すべて整備簿へファイリングしていたほど。
フロリダ州の東岸、ケープカナベラルの自宅へ戻った彼は、その後の10年間、週末のドライブでコブラを楽しんだ。1970年には接触事故でボディを傷つけてしまうが、自分で補修。ジムカーナへ出場し、トロフィーを勝ち取った事もあった。

リンダウアーは何度か転売も考えたようだが、1974年に空調の効いたガレージへコブラを移動。ジャッキアップした状態で、保管することに決めた。エンジンは定期的に始動させていたが、2001年にこの世を去るまで、陽光を直接浴びることはなかった。
クルマを受け継いだのは、中東部のノース・カロライナ州へ住んでいた彼の息子、ロバート・リンダウアー・ジュニア氏。だが、そこでも同様に8年間保管された。







































































































