ピアニスト長谷川琴美が聴いた、マセラティの美しい走り(前編) 移動そのものが美しい体験

公開 : 2026.08.12 11:45

ショパンの言葉に通じる美意識

以前、演奏活動でウィーンに滞在していたとき、『シンデレラ』や『白鳥の湖』を鑑賞する機会があった。オペラやバレエには、器楽コンサートとはまた違う華やかさがある。

劇場建築、豪華な内装、美術、舞台装置、色鮮やかな衣装、そして重厚感のあるオーケストラ。幕が上がる前から、すでに物語の中に足を踏み入れているような感覚を覚える。

ショパンについて、音楽大学の大学院で研究。今も演奏活動に留まらず、様々な方面で知見を深める。
ショパンについて、音楽大学の大学院で研究。今も演奏活動に留まらず、様々な方面で知見を深める。    佐藤亮太

こうした芸術体験について考えると、私はショパンの言葉を思い出す。彼は弟子たちに、「練習は二、三時間で十分。その代わりにオペラ座へ行きなさい」と語ったと伝えられている。

ショパン自身もまた、音楽だけでなく、装いにも深い美意識を持っていた。パリ屈指の仕立屋で誂えた服をまとい、帽子やステッキ、白い鹿革の手袋に至るまで、美しく装っていたことが知られている。

彼にとって芸術とは、単に音だけで完結するものではなかったのかもしれない。空間も、服も、香りも、その場の空気さえも、彼の感性を磨く材料だったのだろう。

グランカブリオにも、どこかそれに通じる美意識を感じた。単なる移動手段ではなく、移動そのものを美しい体験へと変えてしまう存在。そんな一台だ。

*ピアニスト長谷川琴美が聴いた、マセラティの美しい走り(後編)に続きます。

【KOTOMI(長谷川琴美)】

ピアニスト・作編曲家。ミス・ワールド・ジャパン2017日本大会タレント賞受賞。武蔵野音楽大学大学院音楽研究科博士前期課程ピアノ専攻修了。
2025年、自身初のオリジナルアルバム『Chasing Echoes』をリリース。自作曲をはじめ、バッハのアレンジやジャズにも取り組み、マスタリングには、『SHOGUN-将軍-』でエミー賞受賞歴を持つ赤工隆氏を迎えた。
『車×音楽で人生を豊かに』をテーマに、演奏や作編曲など幅広く活動している。

記事に関わった人々

  • 撮影

    佐藤亮太

    Ryota Sato

    1980年生まれ。出版社・制作会社で編集経験を積んだのち、クルマ撮影の楽しさに魅了され独学で撮影技術を習得。2015年に独立し、ロケやスタジオ、レース等ジャンルを問わない撮影を信条とする。現在はスーパーカーブランドをはじめとする自動車メーカーのオフィシャル撮影や、広告・web・雑誌の表紙を飾る写真など、様々な媒体向けに撮影。ライフワークとしてハッセルブラッドを使い、生涯のテーマとしてクラシックカーを撮影し続けている。佐藤亮太公式HPhttps://photoroom-sakkas.jp/ 日本写真家協会(JPS)会員

ピアニスト長谷川琴美が聴いた、マセラティの美しい走りの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

Google検索で『AUTOCAR JAPAN』の記事を見つけやすくする方法

人気記事