【レーシングドライバー塚本ナナミのスーパー耐久参戦記】第4回: スーパー耐久SUGOで優勝! 大クラッシュから1ヵ月で挑んだ奇跡の復活劇

公開 : 2026.07.12 07:45

レーシングドライバーの塚本ナナミ選手によるスーパー耐久参戦記です。2026年シーズンにフル参戦というチャレンジを、本人自ら語ります。第4回は、7月4、5日にSUGOで勝ち取った、嬉しい嬉しい優勝報告です。

「間に合わないかもしれない」──ガレージで見た『大手術』

撮影:佐々木純也

富士24時間レースでの大クラッシュから、1ヵ月足らず。第4戦『SUGOスーパー耐久4時間レース』(宮城県・スポーツランドSUGO)は、これまでにない緊張感の中で迎えることになりました。

クラッシュした822号車を福島県のガレージ『ファインリミテット』に運んで調べてみると、ダメージは予想以上。フロント周りはすべて損傷しており、丸ごと切り抜いて新しく溶接し直すという、まさに『大手術』が必要な状態でした。

みんなで勝ち取った表彰台の一番高い場所!
みんなで勝ち取った表彰台の一番高い場所!    佐々木純也

皆さんに喜んでいただいているオリジナルカラーリングの再現まで含めると、「本当に間に合うのか」──チームの誰もが不安を抱えていました。

私もガレージに駆けつけ、現場をこの目で確認しました。そこには、北海道から作業のためにやってきた水田監督が、ファインリミテットの村松チーフエンジニアとともに、つきっきりでマシンを修復してくれている姿がありました。

そして大会前日、なんとか形になったマシンをサーキットに搬入。ただ、外見は戻っても、走らせてみなければ本当にトラブルが解消されたのかは分かりません。

木曜日からの専有走行(本番前に走れるテスト走行枠)でセッティングを詰める予定でしたが、SUGOの空は大雨続き。安定した路面でマシンの正確な動きを確かめたくても、それすら叶わないまま、ぶっつけ本番に近い状態で予選を迎えることになったのです。

雨のノックアウト予選、プレッシャーの最高潮で捨てたもの

今回の予選は、規定タイムをクリアしたクルマだけが上位のアタックへ進める、段階的なノックアウト方式でした。スーパー耐久の予選は複数のドライバーがそれぞれタイムを刻み、その結果を合わせてスターティンググリッド(決勝のスタート順)が決まる仕組みです。

まずBドライバーの川福健太選手が最初のセッションを突破し、上位グループ進出を決めてくれました。続いて、Aドライバーの私の出番です。正直に言うと、24時間レースでのクラッシュは精神的に大きな重荷となっていて、「私にやれるだろうか……。絶対に失敗できない」という思いの中にいました。

不安で何度も車載を見直す塚本ナナミとサポートする川名選手。
不安で何度も車載を見直す塚本ナナミとサポートする川名選手。    佐々木純也

しかも折悪しく、私の予選はドライ路面から雨が降り始めるタイミングに当たってしまいました。クラッシュを経験したばかりのドライバーにとって、これほど悪いイメージにつながる状況はありません。

プレッシャーが最高潮に達した私は、すべての邪念を捨てることにしました。

とにかくこのクルマを無事に走らせたい。少しでも周回を重ねて、データを取りたい──その作戦に徹したのです。

結果はクラス3番手。私の中では決して満足できるタイムではありませんでした。でも、マシンはノートラブルで予選を走り切ってくれた。『最低ラインの合格』を胸に、私たちはクラス3番手からのスタートを迎えることになりました。

記事に関わった人々

  • 執筆

    塚本ナナミ

    Nanami Tsukamoto

    ブラジル・サンパウロ生まれ、山梨育ち。やまなし大使を務めるレーシングドライバー。GAZOO 86/BRZレースで経験を積み、2015年にはポルシェカレラカップジャパンで年間チームチャンピオンを獲得した。海外ではニュルブルクリンクVLN耐久レースに加え、アメリカ、タイ、インドネシアでのドリフト競技にも参戦。競技の最前線で培った知見をもとに、自動車メーカーと連携した女性向けの脱ペーパードライバー講習や企業向けドライビング講習を行うほか、ゲームやアニメを活用し、運転する楽しさと交通安全の大切さを伝える活動にも取り組んでいる。

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