脳内で6速MTと認知 フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ 孤高のメーカーが、速さを犠牲にして純粋な楽しさを追求 8速DCTを見事に制御

公開 : 2026.11.06 18:05

極めて直感的で挙動の乱れ1つナシ

アクセルレスポンスは即時的で、回頭性は機敏で正確。フェラーリへ期待するとおり、少しやんちゃな操縦性を堪能できる。この上ないほどの、特別感を享受できる。

走行中にマニュアル・モードへ切り替えるには、72km/h以下で、クラッチペダルを踏み込むだけ。シフトノブ上のアイコンがオレンジ色に灯り、有効になったことを知らせてくれる。ATモードへ戻す場合は、センタートンネル上のDボタンを押せばいい。

フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレを運転する筆者、リチャード・レーン
フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレを運転する筆者、リチャード・レーン

シフトレーバーの付け根には、強固な鋼材で高精度に加工された、レバーを周期振動させる機構が隠れている。スプリングと偏心ローラーなどで、ゲートへ吸い込まれる感覚は再現。部品の表面はあえて荒く仕上げられ、機械的な触感も生み出されているとか。

シフトダウン時のオーバーレブを防ぐため、物理的にロックする機構も仕込まれている。もっとも、短時間ながら相当なペースで走らせてみたが、極めて直感的でこの機能の出番はなかった。システム全体で、挙動の乱れ1つなかったことに驚かされた。

遊び心に溢れた革新的技術

8速デュアルクラッチATとして動く場合、2枚あるクラッチの片方は、繋がっているギアの次へ備えていれば通常は済む。だがマニュアル・モード時は、ドライバーが2速から5速へ一気にシフトアップすることもある。4速から2速へ、一気に落とす場面もある。

そこで、シフトレバーが動き始めた瞬間からセンサーは予測的に反応し、混乱を防いでいる。ペダル配置はヒール&トウへ理想的で、再現性は高い。

フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ(欧州仕様)
フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ(欧州仕様)

誤操作で、エンジンを傷める心配はない。渋滞で、クラッチが焼き付く不安もない。クラッチペダルを踏まないパワーシフトはできないが、惜しむのは極一部の人なはず。

デ・シモーネは、本物のMTを完璧に再現したのではなく、伝統的な操作方法を称える、遊び心に溢れた革新的技術だと表現する。こんな印象的なアイデアを引き出しの中へ隠さず、世の中へ提供した決断を大いに喜びたい。

フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ(欧州仕様)のスペック

英国価格:50万8000ポンド(約1億556万円)
全長:4733mm
全幅:1980mm
全高:1292mm
最高速度:331km/h
0-97km/h加速:2.9秒
燃費:6.4km/L
CO2排出量:353g/km
車両重量:1565kg
パワートレイン:V型12気筒6496cc ツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:830ps/9250rpm
最大トルク:69.0kg-m/7250rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(6速マニュアル)/後輪駆動

フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ(欧州仕様)
フェラーリ 12チリンドリ・マヌアーレ(欧州仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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