エンジンは356用1.5L ポルシェ・タイプ597「ヤークトワーゲン」(1) 妥協許さぬ設計の過剰性能 水に浮かぶオフローダー
公開 : 2026.10.31 17:45
戦後のポルシェが開発した、タイプ597「ヤークトワーゲン」。妥協を許さない設計で、汎用の軍用車には過剰な性能を獲得していました。エンジンはポルシェ356用の1.5Lです。UK編集部が貴重な試作車を紹介します。
もくじ
ーキューベルワーゲンやシュビムワーゲンを設計したポルシェ
ー軍用の汎用車には過剰気味な性能
ーポルシェ356用の1.5Lにパートタイム四輪駆動
ー目を閉じればポルシェ初期のスポーツカーの印象
ー組み立ては550スパイダーと並行で
キューベルワーゲンやシュビムワーゲンを設計したポルシェ
2026年の感覚では、四輪駆動のポルシェと聞いても珍しくは思えない。洒落た住宅街を歩けば、豪華なレザー内装を備えたカイエンやマカンが止まっている。ドイツ・シュツットガルト製のスポーツカーを生み出すための、貴重な資金源となっている。
しかし、都会派の四輪駆動モデルがSUVと呼ばれ出す半世紀近く前から、ポルシェは本気のオフローダーを開発していた。丁寧に作り込まれた内装や、良く効くエアコンだけでなく、初期型ではドアすら省かれていた。

ポルシェには、古くから軍用車両の開発経験が備わった。最も有名なのは、当時最強と呼ばれた戦車、ティーガーだろう。クルマ好きなら、後輪駆動のフォルクスワーゲン・ビートルがベースになったタイプ82、キューベルワーゲンを思い浮かべるはず。
タイプ166と呼ばれたシュビムワーゲンも、ポルシェによる設計。モノコック構造シャシーの四輪駆動で、水上と陸上の両方へ対応した。
軍用の汎用車には過剰気味な性能
シュビムワーゲンの生産終了から10年弱が過ぎた1953年、ポルシェは西ドイツ軍向けの汎用車両開発への参入を促される。オーストリアでの亡命生活を終え、フェリー・ポルシェ氏はシュツットガルトへ戻り、ポルシェの指揮を取り始めたばかりだった。
この開発プロジェクトを率いたのは、フォルクスワーゲンの水平対向4気筒エンジンで手腕を発揮した技術者、フランツ・ライムシュピース氏。彼はシュビムワーゲンの哲学を引き継ぎ、モノコックボディを採用し、水上での浮力を与えることを決める。

彼の設計思想は、ポルシェらしく妥協を許さないものだった。結果的には、軍用の汎用車には過剰気味な性能が、与えられることになった。それが、今回ご紹介するポルシェ・タイプ597「ヤークトワーゲン」だ。
ポルシェ356用の1.5Lにパートタイム四輪駆動
エンジンは、フォルクスワーゲンが量産し、安価だった1.2L 水平対向4気筒ではなく、ポルシェ356用の1.5Lユニット。最高出力は、50psへ落とされていたが。後輪を駆動したのは、新開発の5速トランスアクスルで、すべてのギアにシンクロが備わった。
車内のレバーで切り替えられるパートタイム式の四輪駆動で、極めてギア比の低いクローラー用の1速、Gギアも用意。トランスアクスルから前方にプロペラシャフトが伸び、フロントデフへ動力は導かれた。オフロードタイヤで、最低地上高も確保された。

見た目は簡素で、フラットなボディパネルに、ベビーカーへ似たキャンバストップ。だが、1950年代のちょっとした量産車より、運転しやすくもあった。
スターターを回し、空冷のフラット4が目覚めると、356でお馴染みのビートが後方から奏でられる。アルプスのワインディングへ挑もうか、という刺激的なサウンドだが、シンプルなシートはスチール製。トラクターに乗っているような気分にもなる。






















































































































































