前編 高速グループテスト ヴェイロン vs 911GT3 RS vs ガヤルド・スーパーレジェーラ vs DB9 vs R8 回顧録

公開 : 2017.12.16 10:10

まずはヴェイロンのご尊顔を

さて、これだけのアルミとスチールとカーボンファイバーのコレクションが、明日から2日間、僕らの自由になる。誌面的にもハデでいい感じだけど、個人的にもこの企画には特別な意味があった。

というのも僕自身がブガッティ・ヴェイロンを運転したくなることなんて、もしかしてないんじゃないかと思っていたから。重量級のボディにジェット戦闘機級の高出力という設計思想には、正直なところまるっきりソソられない。好みのタイプの正反対。

少なくともS-MAXに乗り込む前はそう思っていた。けれどモールスハイムまであと数時間というところまで来て、少し事情が変わってきた。全身の筋肉がヒクヒク。もしかして興奮している? 

たぶんそう。1001psのロードカーという物体がどんなモノなのか、ちょっと気になりだしてきたんだと思う。

翌朝。ブガッティの工場に到着。要塞のような建物の真ん前にS-MAXを止める。ジャーナリストとフォトグラファーとスタッフで満席の車内。みんな同じことを考えていた。
「ここ? ここが世界でいちばん高くていちばん速いクルマを作る工場なわけ?」

だとしたら、このままあと何時間か待たされたとしてもしかたがない。静かにご対面の時を待つことにした。

要塞の中には組み立てラインがある。たぶん。下請けのメーカーがパーツを運んできて納品したらそれをパレットに載せてラインに流し、スーパーマーケットくらいの大きさの建物の中でスタッフが組み立てる。きっと少数精鋭だ。とても興味をソソられる。そんなことを考えていたら、青いヴェイロン様がご到着された。

広報担当のユリウスがヴェイロンからあわてて飛び出してきて、それでもって彼の第一声が「誰か運転したいひとは?」だったときには一同あっけにとられて顔を見合わせた。しかも続く言葉は「コイツの運転は簡単ですよ。けれど正真正銘の野獣でありますからくれぐれもご注意を」だって。それも愛想よく。眼鏡の奥には満面の笑み。まったく同社のスタッフの親切心は特筆に価する。

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