姉妹車対決 アルファ・ロメオ8C vs マセラティ・グランツーリスモS 回顧録

公開 : 2018.05.04 08:10

決定的な「違い」

しかし、数カ所だがこの2台を別物としている部分があり、そのうちのいくつかは決定的に両者を隔てている。その最たるものがボディ素材だ。

アルファは鋼鉄製のシャシーこそマセラティと共通ながらボディシェルはすべてカーボンファイバー製であり、これによって重大な違いがふたつ生じている。ひとつは車両重量で、もうひとつは価格である。

より軽量なボディ素材を得たことにより、8Cの重量はマセラティに比べて大幅に、数値にして295kgも軽量化されている。これはおおいに評価すべき成果だ。

ただ、それは同時に、コストに対して多大なる影響を及ぼしてもいる。1750万円と決して安くはないグランツーリスモSの価格を8Cが500万円以上も上回る最大の理由にもなっているわけだ。

なぜ、そしてどこから、アルファ・ロメオがこの不相応とも思えるほど高価な8Cを登場させてきたのかをしっかりと認識し、理解するためには、最初のコンセプトカーが登場した6年前の夏のフランクフルト・ショーまで時間を戻す必要があるのだが、もしできうるならば、それよりさらに過去に溯っていただけるとさらに理想的だ。1930〜40年代の昔、アルファがオリジナルの6や8Cコンペティツィオーネで、ロードとレーシングトラックの覇者であった時代である。

8Cは、アルファ・ロメオが自らの歴史を徹底的に俺様流を貫いて表現した、自己満足の産物である。したがってその成否は、周囲がどのような形でこのムードを受け入れるかにかかっている。

バカバカしいほど高価で非常識な代物と解釈されても仕方がないクルマでもあり、それは単に製造台数(アルファはわずか500台の限定版としているがそれで十分だ)だけでなく、その魅力についても当てはまる。

また一方で、アルファ・ロメオが今でも鼓動が高まるような創造力を備えていることを示す証としても、このクルマほど明確なものは最近はなかったわけで、多くのカーガイにとってこれは、ひとまずは吉報に違いない。

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