グッドウッドのコースに帰郷 オースチン・ヒーレー100 明かされた歴史 前編

公開 : 2019.11.02 07:50  更新 : 2020.12.08 10:56

巡り合わせでレストアを担当したオースチン・ヒーレー100。調べていくと、個人としては初めてグッドウッド・サーキットを戦った歴史的なクルマであることが判明。そして2019年、グッドウッドで見事な復帰を果たしました。

偶然出会ったオースチン・ヒーレー100S

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:James Mann (ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
オースチン・ヒーレーがグッドウッド・サーキットのシケインを走り抜ける光景は、英国ではさほど珍しいものではない。1998年のグッドウッド・リバイバル開催以来、その勇姿は毎年見られるといっていい。

だがクラシックカーの専門店を営むビル・ロールズと、息子のチャーリーとジャックにとっては、2019年は5年間の集大成となるイベントになった。図書館で調査を重ね、1700時間以上の時間を掛けて修復を続け、グッドウッドの会場で蘇らせた。この努力がなければ、この個体は朽ち果てていたかもしれない。

オースチン・ヒーレー100
オースチン・ヒーレー100

数え切れないクルマを長年に渡って直してきたロールズ。ライレー・インプやシンガー・ル・マンなどのビンテージモデルも手掛けたが、オースチン・ヒーレーほど強く心を響かせたものはなかった。過去に直した希少な100Mからは、熱い想いがこみ上げてきたという。

情熱的なエンスージャストでもある彼は、必然的にヒーレーの頂点に位置する100Sへの探究心を刺激した。そして運命だったかのように、オースチン・ヒーレー100Sがビルの店へとやってきた。

「以前から薦めれていたので、100Sでビルの店を訪ねようと運転していたのです。ところがガス欠に。電話でトラブルを伝えると5分で迎えに来てくれました」 100Sを手掛けたいという気持ちが素直に湧いた。

結局100Sではなくなったものの、ビルはオーナーから「S」ではない、初期型のヒーレー100のレストアを依頼される。クルマのオーナーは匿名希望なのだが、知られたくない過去があるらしい。

レース参戦の記録を持つ重要なクルマ

「それほど状態は悪く見えませんでした。1年ほどは時間を掛けてレストアするつもりでガレージへ運びました。ところがクルマをバラし始めると、当初の予想よりもひどい状態だとわかりました」 と振り返るビル。

「ボディをシャシーから下ろすと、ため息を付きましたよ。後期型のブレーキが追加され、バルクヘッドには倍力装置が強引に取り付けられていました。しかも交換が必要な状態でしたし、至るところがサビていました。シャシーも元の状態がわからないほど」

オースチン・ヒーレー100
オースチン・ヒーレー100

すべてのリビルドが前提ではあった。だがオーナーの履歴をたどる内に、このクルマがレースマシンだったことを示す興味深い情報が見つかった。そこから作業に対する熱意はさらに高まったそうだ。

「ビル・ピゴットが書いたオースチン・ヒーレー100の専門誌を読んでいると、このクルマの写真が載っているのに気づきました。調べ始めると、このクルマが当初はレースで戦っていたことが明らかになったのです」

調査の結果、15年間分のグッドウッドでのレース記録集を購入することになる。アーカイブには、デビッド・シェールのヒーレーが参戦車両リストに載っていた。「手に入れた記録集には、前の所有者が鉛筆でレース結果を記していました。おかげで彼がレースで3位に入賞していることもわかったんです」

記録集の写真と日付、レースの参戦車両リストを比較確認すると、このDNH828のナンバーを付けたヒーレー100は、歴史的に重要なマシンだと判明した。グッドウッドでのレースに初めてプライベーターとして、個人的に参戦したクルマだったのだ。

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