【今あらためて試乗】ホンダ・シティ2代目(GA1/2型) 究極の「ふつう」 身近な絶滅危惧種

公開 : 2020.01.19 05:50  更新 : 2021.10.09 22:40

東京、武蔵小山にある鈑金屋さんの軒先に、白い2代目ホンダ・シティを見つけました。中古車的に表現すると「ワンオーナー、低走行、フルノーマル」の素晴らしい個体に乗り「ふつう」とは何かを考えました。

鈑金屋さんの軒先にて

text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
photo:Koichi Shinohara(篠原晃一)

東京、武蔵小山にある鈑金屋さんの軒先に、白い2代目ホンダシティはチョコンと佇んでいた。このクルマが鈑金待ちでないのは、年式の割にはキレイなボディからもすぐにわかった。

「昔、ホンダさんの仕事をやっていたから、お付き合いで買ったんだよ。もうかれこれ25年以上乗っているんじゃないかな。近所をちょこっと走るだけ」とは矢野沢自動車鈑金の矢野沢さん。

2代目シティは、ベーシックな道具感が漂っている。2ドアであることも、すっきりした見た目に貢献している。
2代目シティは、ベーシックな道具感が漂っている。2ドアであることも、すっきりした見た目に貢献している。

走行距離は約5万6000kmだから、中古車的に表現すると「ワンオーナー、低走行、フルノーマル」というすばらしい個体である。

最近街でもすっかり見かけなくなってしまった2代目シティだが、いま改めて見ると低く抑えられ、体脂肪率1ケタ台を思わせる簡潔な造形に美しさを覚える。

まるでフィアット・パンダのような、ベーシックな道具感が漂っているのだ。2ドアであることも、すっきりした見た目に貢献している。

1992年式でグレードはベーシックなCEで、ホイールも鉄チンなのだが、ボディサイドやリアウインドーの上部には誇らしげに16VALVEの文字が躍っている。

珍しいのは、シングルカムなのに気筒毎4バルブであるという点なのだが、SOHCではエバれないと思ったのか、敢えて16バルブとだけ書いてある点が面白い。

今でも「これで十分」のワケ

2ドアというと、わが国ではドアを開けた時に幅を取るので敬遠されることもある。だがシティはボディ自体がコンパクトなので、問題なし。

室内は思いのほか広く、そして明るい。ベーシックグレードらしく、シートはグレーのビニールと布のコンビで地味にまとまっている。

ベーシックグレードらしく、シートはグレーのビニールと布のコンビ。
ベーシックグレードらしく、シートはグレーのビニールと布のコンビ。

ギアボックスは5速マニュアルと4速ATが用意されていたが、この個体は前者のほうだ。

矢野沢さんに「このクルマ、ギア付きだけど、運転できる?」と言われたので「はい、大丈夫です」と答え、お借りする。

そうそう、昔はマニュアルのことを「ギア付き」と言い、逆にオートマのことを「ノークラ」(クラッチがないという意味)なんて言っていたっけ。

都内を走る2代目シティは「驚くほどすばしっこくて速い!」なんてことはまるでなくて、まあ平凡な乗り物である。5速マニュアルもハンドリングも全く癖がない。これで助手席に伝票の山があったら営業車そのもの。

でも後席もたっぷりしているし、ボディの見切りもいい。そして何よりクルマが軽い。速いわけではないのだけれど、クルマがスッスッと前に出る、そんな感じ。

駐車スペースが限られる都内であれば、今なお2代目シティで十分という人がいても不思議ではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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