【相違の英国オープン・スポーツ】ロータス・エランとサンビーム・タイガー 後編

公開 : 2020.02.29 16:50  更新 : 2020.12.08 10:55

秀でた走りのコアはボディの小ささ

前後重量配分はアルパインより50:50に近く、バランスのいいサンビーム・タイガー。控えめなアンダーステアが出るものの予測可能で、オーバーステアへも持ち込める。漸進的な挙動だから、ドライバーの右足次第で自由自在だ。

だがエランほどの、白眉のドライビング性能は持ち合わせていない。小さなボディを持つクルマに共通することだが、例えおもちゃのように見えたとしても、秀でた走りのコアはその小ささにある。

ロータス・エラン・シリーズ3(1965年〜1968年)
ロータス・エラン・シリーズ3(1965年〜1968年)

軽量なボンネットは数秒で取り外せ、ツインカムエンジンの整備も容易。左には大きなダイナモがぶら下がり、右にはウェーバー製のキャブレターが並ぶ。

襟を立てて気品高く乗るのは少々難しいが、乗り込めばすべてがしっくり来る。足元の空間には余裕があるものの、右肘周りは少々タイト。左上は自然とセンターコンソールのパッドに乗せていた。

美しくレイアウトされた木製のダッシュボードには、フォードとBMC、トライアンフの部品が混在している。タイガーとは異なり、1960年代後半としては珍しく、シリーズ3のエランにはパワーウインドウが付いている。

ヒーレー・スプライトのライバルでもあったが、チャップマンの当初の考えとは少し食い違っているようにも思う。S1はスライド式だった。

フォード・アングリアを思い出させるスターター音のあと、ツインカム・エンジンはすぐに目覚めた。アイドリング音にワクワクする。小さなペダルを踏み込む。クラッチは軽くズムーズだが、ブレーキはショートストロークでブースト量が強く、慣れるのに少し時間が必要だった。

想像以上のコーナリング・スピード

幅155の細いタイヤに、減衰力の強いダンパーと柔らかいスプリング。エランの乗り心地は極めて柔軟で、いくつかの最新サルーンも驚くはず。路面の剥がれた大きな窪みでも、強い衝撃は伝わらず、ボディのソリッド感は失われない。

スロットルの反応はかなり積極的だから、低速域はスムーズさに欠ける。2000rpmを超えると力強いトルク感が沸き立つ。そのまま踏み込めば、ツインカム・エンジンは7000rpmまで甘い美声を響かせる。2度の変速で、160km/hを超えてしまう。

ロータス・エラン・シリーズ3(1965年〜1968年)
ロータス・エラン・シリーズ3(1965年〜1968年)

理想的な位置のシフトレバーは短く、驚くほど操作は軽快。ショートストロークで精度に優れ、最も滑らかなトランスミッションとして賞を与えたくなるほど。

56km/hほどで入る4速がトップ。充分に力強くクルマを進める。エランを運転すると、本能的に自然とスピードが上がってしまう。車重の割にパワーは申し分なく、細身のタイヤはグリップ力も限られる。ロータリー交差点でそのことを重い出させてくれる。

高めのレシオが組まれたステアリングホイールは、精度も一級。アンダーステアやキックバックに悩まされることなく、一連の思考の中で違和感なく操れる。

上手にコーナリングを始めれば、サイドサポートのしっかりしたシートに体が張り付く。想像以上のコーナリング・スピードをエランは備えている。指やつま先、背中に伝わってくる感触は豊かで、狭いコクピットだが、操縦性には懐の深い寛容さがも感じ取れる。

小さなエランを着るように低く座る。21世紀の道路環境では、他のドライバーから視認されにくい、という点が最大の危険。だが、機敏な走りと小さなボディサイズが、アクティブ・セーフティの面では有効に働いてくれる。

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