【完璧・万能なスーパーカー】ポルシェ911ターボSへ初試乗 992型 650ps獲得 後編

公開 : 2020.04.11 10:20

スポーツカーの代名詞といえる最新のポルシェ911に、最強版のターボSが登場。650psというパワフルな新エンジンに加え、数多くの技術的なアップグレードが図られています。英国編集部がドイツ・シュツットガルトで初試乗しました。

輝く中心は秀逸のステアリング

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
最新の992型ポルシェ911ターボS。もはや明確なターボラグは存在しない。アクセルを深く踏み込んだ瞬間、1000rpmから、リミッターのかかる7200rpmまで、桁違いの鋭さで1640kgの911を推し進める。

極めてスムーズで切れの良いトランスミッションが、新しいエンジンの即時的なレスポンスを引き立てている。フラットプレーン・クランクのユニットほど、最新のフラット6は狂気の吹け上がりは見せないものの、ポルシェとしての強い意思が伝わってくる。

ポルシェ911ターボS(992型・欧州仕様)
ポルシェ911ターボS(992型・欧州仕様)

特に高回転域でのシャープさが、走りを表すようだ。従来のユニットよりも力強く、気勢を感じる。

もちろんターボSが持つダイナミクスの魅力は、直線加速とスピードだけではない。すべてを輝かせる中心は、秀逸のステアリングにある。

速度感応式の電子制御4輪操舵システムは、素晴らしい滑らかさと反応の良さを兼ね備えている。ステアリングホイールに伝わる重みは、速度域を変わらず一定。近年のターボSでは叶えられなかった、強い一体感を生み出している。

俊敏さを引き上げるため、ポルシェはリアタイヤ側のステアリング動作を見直し、レシオを6%増やした。その結果、シャープでピタリと決まるターンイン特性が得られている。

数多く施されたシャシー周りの改良の中でも、アクティブ・ロール制御システムは目玉といえる。これは、アダプティブダンパーによるポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム(PASM)と同調して機能する。

呆れるほど速いが、穏やかさが残る乗り心地

992型のポルシェ911ターボSでは初めて、車高が10mm低いオプションのスポーツサスペンションが用意された。歩道の段差などでフロントの車高を40mm持ち上げる、フロントリフト機能もオプションとして選べる。

このスポーツサスペンションは、波長の長い路面のうねりとも上手に息を合わせ、細かな凹凸や隆起部分に対しても、優れた衝撃吸収性を備えている。先代の991型で見られた、フロントの上下動も見られない。

ポルシェ911ターボS(992型・欧州仕様)
ポルシェ911ターボS(992型・欧州仕様)

よほど酷い路面でない限り、ターボSを路面に吸い付くように保ってくれる。サスペンションのメインスプリングに追加された、ヘルパースプリングの採用も効果的に働いているのだろう。

弱点があるとすれば、極めて滑らかな路面以外、常にタイヤから発せられるロードノイズ。特にリアタイヤからのノイズが大きい。

初代911ターボから2倍以上の馬力を獲得している992型のターボS。すべての技術が、即時に生み出される大パワーへのアクセスを可能としている。呆れるほどに速いが、乗り心地には穏やかさすら残っている。

足回りの設定は充分にドライバーに優しい。コンフォート・モードを選んでいれば、充分なしなやかさで長距離ドライブを楽しめる。スポーツとスポーツプラス・モードでも、引き締まるとはいえ、乗り心地はよく調整できている。

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