【なぜ?】フェラーリF355、人気急上昇 相場は800万円以上に 右肩上がりの魅力を探る

公開 : 2020.05.20 11:20  更新 : 2021.10.11 09:33

実用性/ハンドリング/サウンド

もう1つの評価ポイントは、現在でも通用するパフォーマンスを備えていることだ。

最新のフェラーリに較べれば380bhpのパワーは物足りなく感じようが、常にシグナル・グランプリや超高速で走るわけではなく、踏めばリニアに反応し日本の公道で痛痒を感じることはない。また実用性も高く、エアコンが効くため普段乗りができることも見逃せない。

現代の目で見てもデイリーユースに問題なく使えるうえ、“ドライバーが全てを制御する最後のフェラーリ”という価値もある。
現代の目で見てもデイリーユースに問題なく使えるうえ、“ドライバーが全てを制御する最後のフェラーリ”という価値もある。

現代のモデルのように、電子デバイスがクルマを制御するのではなく、“ドライバーが全てをコントロールする最後のフェラーリ”といえる点も1つの魅力。

そして、素直でマイルドなハンドリングは、安心してコーナーを攻められる。こうしたクルマとしての懐の深さも美点なのだ。

また、フェラーリとして初めて排気音がデザインされたのがF355だ。

1997年にマイナーチェンジされて形式がXRになってからは、レブリミット8500rpmの高回転型エンジンは、F1マシンを思わせる快音を奏で、一躍人気を集めた。

それだけに、よりF1サウンドを追求した社外のスポーツマフラーに交換するオーナーも少なくない。

手が届かぬ現行世代 F355では差益も

スタイリングが良くて、乗って楽しめるF355は、フェラーリを夢見る普通のクルマ好きにとって、目標の1台になってきた。

なにしろ現行のフェラーリは高価になり、ユーズドカーになっても値下がりしない。こうしたトレンドによって、手が届く価格帯にあるF355に人気が集まっている。

「ちゃんとメンテナンスをしていれば、それほど値落ちしない」と、所有経験のある筆者(上野和秀)は考える。
「ちゃんとメンテナンスをしていれば、それほど値落ちしない」と、所有経験のある筆者(上野和秀)は考える。

「フェラーリは高くて買えない」という声をよく聞くが、一度ハードルを越えてしまえば、意外や経済的といえる。

確かに最初の支払額は大きく、維持費もそれなりに掛かるが、F355のような人気モデルは、ちゃんとメンテナンスしていればそれほど値落ちしないのである。

量産スポーツモデルが数年で半値になってしまうことを考えれば、F355はバリュー的には優等生。筆者が所有していたF355もちょうど値上がり時期に手放したことから購入額以上の値が付いたほどである。

こうした人気モデルならではのメリットもあり、実質的にハードルが低いといえる。

こだわりのオーナーが支える人気

乗り手を魅了するパフォーマンス、サウンド、スタイリング。これに加えて、フェラーリとしては買いやすい価格(値上がりしてしまったが……)が人気の秘密。

現在のF355オーナーのほとんどは長年憧れてきた普通のクルマ好きで、頑張って夢を叶えた方がほとんど。それだけに、こだわりも大きく、ウェブ・コミュニティでの活動やオフ会には各地から多くのオーナーが集う。

高い人気の秘密は、フェラーリとしては買いやすい価格帯と、熱心なオーナーたちの存在。
高い人気の秘密は、フェラーリとしては買いやすい価格帯と、熱心なオーナーたちの存在。

フェラーリの中で、最もオーナーがこだわりを持って乗っているのがF355。

今後もマラネッロからどんなニューモデルが出ようが、F355はネオクラシック・モデルの代表格としてフェラリスティから支持されてゆくはずだ。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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