【シェアするクラシックカー】モーリス・エイトが広げるファンの若返り 前編

公開 : 2020.09.19 07:20  更新 : 2020.12.08 08:39

戦前のモーリスとして最も現代的

レジスターには多少の予算があり、クラシックカーを貸し出す、というアイデアが実行された。当初は、戦前のモーリス・バンの購入を考えていたという。

クラシックカーの世界では、話題に上がる一般的な手法だ。若い世代を取り込むために、古いクルマを運転する機会を与えられる。初めての人にも。

モーリス・エイト・シリーズE ツアラー(1938〜1941年)
モーリス・エイト・シリーズE ツアラー(1938〜1941年)

モーリス・レジスターの貸し出し車両を、エイト・シリーズEにするよう仕向けたのは、クラブマガジンの編集を務めるロブ・シモンズ。戦前のモーリス製モデルとしては、最も現代的なクルマで、彼自身がエイト・シリーズE ツアラーの熱狂的なオーナーでもある。

シモンズが説明する。「クラシックカーの運転は、(若い世代にとって)未知の領域です。多くの人は、その領域へ足を踏み入れたいとは思いません。われわれのクルマに興味を持ってもらうことすら、難しい問題です」

「エイト・シリーズEには、4速のトランスミッションが付いています。3速のエイトより、はるかに実用的で、違うクルマに感じさせてくれます」

「シリーズEなら、スーパーへ買い物に行けます。馬鹿げた気分にもならずに、いつもの土曜日のように」。そこで、このFYK 259のモーリス購入へとつながった。

「思いがけない驚きがありました。FYK 259には、まったく不具合がなかったのです。わたしが所有するシリーズEより調子が良く、内心がっかりしたほど。90km/h近いスピードで快適に走れます」。シモンズが笑う。

最初に借りたのは46才の美術教師

モーリス・レジスターにやってきたシリーズE ツアラーは、3月から10月の間に貸し出されることになった。冬の間は、メンテナンスが施される。

レジスターは、貸し出すための妥当な手順として、車検を通した。英国では、クラシックカーに車検義務はない。

モーリス・エイト・シリーズEを借りたデボラ・フライ
モーリス・エイト・シリーズEを借りたデボラ・フライ

借りる側には条件がある。年齢は30才以上で、もちろん運転免許証が必要。別に自分用のクルマを持っていること。モーリスは通勤利用できない。ガレージがあり、旧式のクルマに対する初歩的な知識があること。

借りている間の基本的なメンテナンスも、条件の1つ。自動車イベントなどにモーリスを持ち込み、クラブマガジンへ簡単な記事を寄稿する必要もある。

そんな貸し出し用モーリス・エイト・シリーズEの最初の利用者は、46才のデボラ・フライ。ダービーシャーに住む、美術教師だ。

彼女のクラシックカーの経験は、フォルクスワーゲンビートルのみ。父がトライアンフのファンで、ヘラルドやスピットファイア、スタッグなどを所有。クラシックカーに囲まれて育ったという。

モーリスを初めて運転して、どんな印象を持ったのだろう。「すぐにクルマには慣れました。すごく楽しいと気づいたんです。サイズも丁度イイ。これより大きいクルマは避けたいですね。速さも充分」

「クルマの少ない道では、95km/hほど出せました。ピーク・ディストリクト国立公園まで走りましたが、4人が乗ると重そうでした」。とフライが話す。MTは1速がノンシンクロで、操作は難しいと感じたそうだ。

この続きは後編にて。

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