【余命を伸ばすレストア】デューセンバーグ・モデルSJ 世界最高を復活させる 後編

公開 : 2020.09.27 16:50  更新 : 2020.12.08 08:38

長期休暇でレストアを手伝った息子

「アーノルドは、カリフォルニア州のネザーカット・コレクションという自動車博物館で働いていた人物。ところが経営難になり、離職。自らのショップを立ち上げ、仕事へ必死に取り組んでいました」

「アーノルドは、地面においてあるトランスミッションとバラバラのホイールを眺めて、大丈夫、わたしたちが直せます。と仕事を受けてくれました」。デューセンバーグはサンタ・クラリータのワークショップへ運ばれた。

デューセンバーグ・モデルSJのレストアの様子
デューセンバーグ・モデルSJのレストアの様子

一方で、オーナーの息子、ラリーも長期休暇を取り、アーノルドのワークショップへこもった。デューセンバーグのレストアに毎日を投じるために。

ジャックが当時を思い返す。「奇跡のようでした。2人が協働して、魔法のように仕事を進めてくれました。テレビ電話で毎朝9時に、話をするのが楽しみでした。1日のハイライトでしたよ」

「何がどう進んでいるのかが見える。毎朝、おーい、という掛け声でスタートします。本当に素晴らしい朝でしたね」

「デューセンバーグを購入したとき、シャシーは動かせる状態でしたが、エンジンはバラバラ。ボディは、全体の半分近くがない。一筋縄ではいかないプロジェクトでした」

「ニューヨークのロチェスターに保管している間も、作業は進めていました。ですが、手つかずの部分も沢山。難しい課題にもぶつかっていました」

ジェイ・レノのクルマから部品の型取り

「小物類やシート、インテリアは一切ありませんでした。幸い、ピート・フランシアという優秀なメカニックがいて、レストアのためにニューヨークから来てもらったんです」。とラリー。

ジャックのデューセンバーグは、もともとは自然吸気のモデルJだった。だが早い段階で、スーパーチャージャー版のモデルSJとしてレストアすることが決まった。

デューセンバーグ・モデルSJ(1932年)
デューセンバーグ・モデルSJ(1932年)

スーパーチャージャーの頭文字が「S」。エンジンの回転数の5倍でコンプレッサーが回り、空気を送り燃焼を促す。最高出力は268psから324psへ高められていた。

「最良の部品を使用して、エンジンは組み直されています。内部のギアすら、バランス取りしています。ピートはドライブトレインで素晴らしい仕事をしました。悲観的なわれわれに前進する気持ちを与えてくれる、重要な人物でした」

アーノルド・シュミットも、数十年に及ぶ専門知識を有していた。塗装や内装など、腕の確かな職人たちとのつながりも持っていた。

ラリーが説明する。「アーノルドは、テレビ司会者のジェイ・レノが持つ、ダブル・スチームをレストアした経験もありました。その経緯でレノは、細部の写真撮影だけでなく、彼のデューセンバーグから部品を外すことすら許可してくれました」

「その部品をスキャニングして、3Dプリンターで樹脂の型を作り、鋳造しています。ドアハンドルなどは、見つけるのも難しく、デューセンバーグ固有の部品。細かい部分まで、すべてを正しく作り直し、正しく組み直しています」

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