BMW i3 レンジ・エクステンダー

公開 : 2013.11.08 22:00　　更新 : 2017.05.29 18:00

■どんなクルマ？

いまさらBMW i3についての説明は不要だろう。メガ・シティ・ビークルとして3年前にコンセプト・モデルが発表され、現在英国でセールスがされているモデルだ。アルミニウム・シャシーに強化プラスティックのボディをまとい、リア・ホイールを167bhp、25.4kg-mのモーターで駆動するドライブトレインを持つ。

今回試乗したのはi3のレンジ・エクステンダー・モデルだ。これは2気筒のガソリン・エンジンで18.8kWhのリチウム・イオン・バッテリーに充電するレンジ・エクステンダーを搭載する。その647ccの2気筒エンジンは、BMWのスクーターから流量されたもので、36bhp/4500rpm、5.5kg-m/4800rpmのパワー、トルクを発揮する。

シールドされたリアのブート・フロアの、モーターと反対側に搭載されるそのエンジンは、EU6レギュレーションを満たしたものだが、直接的にリア・ホイールを駆動できないのは、シボレー・ボルトとは異なるところだ。

i3の小さいエンジンは、9ℓの燃料タンクを持つ。そのエンジンの燃費は、換算すれば14.2km/ℓから17.7km/ℓ程度だと、BMWのスタッフは話してくれた。ちなみに、公式のi3レンジ・エクステンダー自体のオフィシャルな燃費は167km/ℓである。

そのボディ重量は、レンジ・エクテンダーを持たない純粋なEVのi3の1195kgから1315kgになっている。その結果、0-60km/h加速は3.7秒から3.9秒へ、0-100km/h加速は7.2秒から7.9秒へとダウンしている。

■どんな感じ？

i3はこれまでのBMWのプロダクション・モデルと異なり、ブランドのベストともいうことのできるキャラクターが盛り込まれている。その短く高いスタイリングの中に、素晴らしい重さのステアリング、一線級のドライブトレイン、光るロード・パフォーマンス、卓越したハンドリングが納められているのだ。

スタイリングは驚くほど現代的というか、やや行き過ぎのきらいもしなくはない。キャビンは著しく現代的だ。視界の良いフロント・ビューの下には、ツインスクリーンを持つダッシュボードが配置される。スイッチ類のクオリティも高い。また、シートは長距離のドライブでも快適なものだ。

街中で有用なのは、その小回りの聞く最小回転半径だ。9.8ｍという最小回転半径はロンドンのブラック・キャブと遜色ない。

i3で驚いたのはロンドンの凸凹とした悪路でも非常に良い乗り心地を見せてくれたことだ。BMWのシャシー・チームは英国でテストを行っていたが、そのテストが成果を上げたようだ。また、より速い速度の求められる1級国道では、フル・スロットルを与えれば印象的なスピードで飛ばすことができた。電気モーターとシングルスピードのトランスミッションとのコンビネーションは、トルクの継ぎ目のない滑らかな加速を示してくれた。

また、ブランズハッチでのテスト走行でも、その安定した走りを見せてくれた。フロント155/70、リア175/70という決して太くないタイヤだが、生憎の天候に見舞われたアップダウンのきついサーキットでも簡単にブレークするようなことはなかったのである。

セントラル・ロンドンへの帰途では、必要に応じてレンジ・エクステンダーが起動するのがわかった。しかし、その単調なサウンドは非常に小さく、何とかその音を聞くことができるかどうかというレベルだった。

また、i3の回生ブレーキのセッティングも非常に良かった。スロットル・ペダルから足を離した瞬間からチャージがはじまるというものだ。なお、ガソリン・エンジンのNoxは0.0009g/kmという値だ。

i3は完全にバッテリーが充電された状態で、燃料タンクもフルであれば、現実的には240〜300km程度の走行が可能で、その時のCO2の排出量は13g/kmとなる。

i3にもマイナス面がないわけではない。先ずその価格。次にリアの後ヒンジのドアがフロント・ドアを開けていないと開閉できないこと。そしてレンジ・エクステンダー用の小さい燃料タンクは130km毎に補給しないとダメだということだ。

■「買い」か？

i3を買うかどうかは個々の判断による。ただし、サイズやファリミー・フレンドリーであるかどうかということを考えなければ、現時点で最も速く最も高級なEVであるということは間違いない事実だ。レンジ・エクステンダーを求めるかどうかは£3,150(50万円)の価格との比較となるが、その場合でもあまりに小さい燃料タンクのサイズには不満を感じてします。

i3はあらゆる面で従来のBMWモデルとは異なるが、それでも間違いなく本物BMWであるということも付け加えておかなければならない。

(ヒルトン・ホロウェイ)