【メルセデスSLを夢見て】キャデラック・アランテ イタリアからボディを空輸 後編

公開 : 2021.01.09 12:25

シャープなATで、必要なだけのパワーはある

年代物のキャデラックだが、ハンドリングはまとまりが良い。車重は1500kgを超え軽い方ではないものの、エルドラド・ベースのサスペンションが優れた仕事をしてくれる。

舗装が荒れていても乗り心地は終始滑らか。大きな上下動もよく抑えられている。

キャデラック・アランテ(1986〜1993年)
キャデラック・アランテ(1986〜1993年)

パワーも充分にある。4速ATは想像以上に鋭く変速し、積極的にキックダウンして、90度V8が生み出す172psを活用させてくれる。

鋭い加速は楽しめないものの、必要なだけのパワーはある。ルーフを開いてV8エンジンのサウンドトラックを聞けば、思わず笑顔になるだろう。アメ車らしく、ストレートや緩いコーナーが気持ちいい。

タイトなカーブでは、軽くないボディを実感させられる。少し積極的に運転し始めると、フロントタイヤをきしませながら、盛大なアンダーステアが待っている。

1986年の発売以降、マイナーチェンジの度にパワーアップも図られた。1989年に排気量4.5LのV8エンジンへアップデートされ、1993年にはまったく新しい299psの4.6LのノーススターV8エンジンも登場している。

1993年に販売を終えるアランテだから、299psのノーススター・エンジンはごく少数。202psの4.5Lエンジン版が、探すなら良い選択肢になるだろう。

確かに一癖あるクルマではある。でも、高級スポーツカー市場に参入しようと試みた、キャデラックの熱意は評価したいところ。

ラグジュアリー2シーター・オープンの夢

アメリカン・ビッグ3がSUVやミニバンの生産に集中していたころ、キャデラックは真のスペシャル・モデルに挑んだ。状況を打破し、難儀な手段で実現した。皮肉にも、メルセデス・ベンツSLに狙いを定めていながら、自らの足を撃つことになるのだが。

アランテは製造品質も動的性能も、当時の水準には達していなかった。プラスティック製パーツはもろく、パフォーマンスもハンドリングも、興奮するたぐいではない。

ボーイング747に積まれるキャデラック・アランテのボディ
ボーイング747に積まれるキャデラック・アランテのボディ

0-100km/h加速9.8秒程度のクルマに、当時5万ドル以上も払う人はいなかった。現在でも同様だろう。

しかし、キャデラック・アランテは悪いクルマではない。シャープで現代的なスタイリングを備え、外から眺める雰囲気はなかなか良い。

やや保守的なメルセデス・ベンツSLに対抗する代替案として、訴求力がないわけではないと思う。今なら随分手頃な価格で、ラグジュアリー2シーター・オープンの夢を実現することもできる。

キャデラック・アランテ(1986〜1993年)のスペック

価格:5万4700ポンド(新車時)/1万5000ポンド(202万円)以下(現在)
生産台数:2万1430台
全長:4536mm
全幅:1864mm
全高:1321mm
最高速度:201km/h
0-97km/h加速:9.8秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1542kg
パワートレイン:V型8気筒4087cc自然吸気(初期モデル)
使用燃料:ガソリン
最高出力:172ps/4300rpm
最大トルク:32.4kg-m/3200rpm
ギアボックス:4速オートマティック

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