【異変】新車の国内販売 トップ3にスズキ/ダイハツ 理由はトヨタの「すき間」

公開 : 2021.05.13 18:05  更新 : 2021.10.22 10:07

日産、新型モデルの投入が大幅に滞る

日産については、2007年頃までの国内販売は、トヨタに次ぐ2位だった。

それが2008年にリーマンショックによる世界的な経済不況が発生して、新型車の開発も凍結された。

日産スカイライン400R
日産スカイライン400R    田村 翔

この影響で2011年以降の日産では、国内に向けた新型車の投入が大幅に滞っている。新型車の発売は1〜2年に1車種程度になり、売れ行きも急速に下がった。

そのために2014年以降の日産の国内販売ランキングは、5位で落ち着いている。

2010年の国内販売台数は64万5320台であったが、2020年は46万8518台だから10年前の73%に留まる。

新型車が減り、設計の古い車種が増えると、売れ行きが急降下するのは当然だ。

ホンダの売れ行きが下がり日産の低迷も続く一方で、スズキダイハツには、メーカーの販売ランキング順位を浮上させる理由があった。

スズキは隙間を突いて入り込みやすい

トヨタに次いで2位のスズキでは、小型車を安定的に売るようになったことが利いている。

スズキの2010年における小型/普通車の登録台数は6万3583台だったが、2020年はコロナ禍の影響を受けながらも1.7倍の10万7247台に達した。

スズキが小型/普通車に力を入れる背景には、軽自動車市場の先行き不安がある。

軽自動車税は、自家用乗用車であれば以前は年額7200円だったが、今は1万800円に増税された。

その一方で自動車税は下がり、排気量1000cc以下の車種は、2万9500円から2万5000円に値下げされている。

加えて軽自動車市場では、スズキとダイハツの販売合戦が激しさを増して、収益確保という意味ではマイナスの効果も生じ始めている。

前述の通りホンダの国内販売では、軽自動車比率が60%に近付き、日産も安定的に40%を超える。

各社が軽自動車に群がっている状況だから、スズキは逆に小型車に力を入れる。

ホンダや日産が軽自動車の売れ行きを伸ばした結果、小型/普通車市場では、トヨタが50%以上のシェアを握る。

2021年4月は、レクサスを含めると57%に達した。小型/普通車では、トヨタだけが圧倒的な売れ行きを誇るから、スズキは隙間を突いて入り込みやすい。

特にソリオは、全長が短くて背の高いスライドドアを備えたコンパクトカーだから、ライバル車はトヨタのルーミーとその姉妹車だけだ。

両車を比べると、後席の座り心地、走行性能、乗り心地などの商品力はソリオが圧倒的に優れているから、販売力は弱くても堅調に売れている。

また主力の軽自動車も、2019年末にハスラーがフルモデルチェンジし、スペーシアはSUV風のギアを加えて販売は好調だ。

ジムニーは大量に売れる商品ではないが、2021年には1か月平均で4000台以上を届け出している。

ワゴンRやアルトも含め、スズキは複数の商品をバランス良く販売することで、したたかに2位の座を獲得した。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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