【スコットランドを480km】ポルシェ・タイカン4S 最高得点に再試乗 AUTOCARアワード2021  後編

公開 : 2021.06.17 16:25  更新 : 2021.06.18 13:21

疑問の残ったステアリングフィール

タイカンは、デフォルトではアクセルオフ時の回生ブレーキの効きが弱く、惰性走行する設定になっている。急な下り坂では、そのままだと回生ブレーキだけでは充分に速度を保てない。

ステアリングホイールのボタンで、効きを強くはできる。しかし、操作を減らしつつ可能な限りブレーキペダルを踏まずに済むように、アダプティブ・クルーズコントロールで速度を調整させながら運転していた。

ポルシェ・タイカン4S(英国仕様)
ポルシェタイカン4S(英国仕様)

そんな2日目のお昼過ぎ、ステアリングホイールのボタンを長押しすると、回生ブレーキをアダプティブ・モードにできると気付いた。このモードでは、下り坂や先行車に詰まった時など、状況に応じて減速量が強くなる。

運転中ずっと気になっていたから、もっと早く発見したかった。そして最後の疑問が残った。タイカンのステアリングフィールだ。

480kmを走った後でも、ポルシェとして好ましいものか判断には悩んだ。正確性や直進性に疑問の余地はない。加速感と同じくらい、ステアリングホイールの操作に合わせて、フロントノーズは間髪なく向きを変える。

重み付けも良い。フィードバックも感じ取れる。しかし、クルマとの一体感が充分ではないように思える。ポルシェのスポーツカーとして、本来なら輝くべき部分だと思う。

チャレンジングなコーナーを攻め込んでも、タイカン4Sはほとんどボディロールしない。オプションの電子制御されるPDCCアンチロールバーの効能だろう。グリップ限界は非常に高く、それ以上の領域に迫ることは一般道でははばかれる。

純EVというエクスキューズが最も不要

ブレイマーの街では、もう一度急速充電器のお世話になった。この場所で充電しなくても、スタート地点まで戻れる航続距離は残っていた。でも、さらにポルシェの英国本社までクルマを返すのに、有利な状況には保っておきたい。

充電を済ませる1時間を過ごすのに、ブレイマーの街は丁度いい。テスラの何台かが、ランチ目当てで訪ねてきた。タイカンはまだ珍しい存在だが、今後数年間で大きく道路の景色は変化するだろう。

ポルシェ・タイカン4S(英国仕様)
ポルシェ・タイカン4S(英国仕様)

整備の進まない充電インフラへの不平に触れることなく、純EVとの楽しい思い出を記せることは喜ばしい。スコットランドのハイランド地方は、人口密度の高い南部ほど充電器の整備は進んでいない。それでも、今回のタイカン4Sとの旅には充分足りていた。

タイカンのインテリアは、もう少し興奮度を高めても良いと思うし、ステアリングの感触はもっと豊かになれば理想的だろう。人工のエンジン音は354ポンド(5万3000円)のオプションらしいが、必要性を感じなかった。筆者はずっとオフにしていた。

充電の心配を抜きにすれば、ポルシェ・タイカンは純EVへ否定的な意見を覆すほど素晴らしく走る。価格は安くないものの、ポルシェの作ったクルマらしく設計や技術の水準は高い。

下から2番目のタイカン4Sですら、現実的な環境では極めて速い。少なくとも、純EVだから、というエクスキューズが最も不要なモデルであることは間違いないだろう。

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