【なぜ?】米で売れない米国車セダン 売れる日本車セダン 「レンタカー」が明暗分ける

公開 : 2021.06.28 05:45  更新 : 2021.10.13 12:03

意外? 米で健闘日本のセダン

一方で、そんなアメリカの自動車市場でも日系ブランドのセダンはアメリカンブランドとは異なる状況となっているのが興味深い。

2020年の新車販売ランキングをみると、
トヨタカムリ:6位
ホンダシビック:8位
トヨタ・カローラ:11位
ホンダ・アコード:17位
日産アルティマ:22位
と、上位25位に1台も入らないアメリカンセダンと異なり健闘しているのだ。

トヨタ・カムリ(北米仕様)
トヨタ・カムリ(北米仕様)    トヨタ

アメリカンブランドのセダンは売れず、ラインナップも壊滅的。

一方、日系ブランドのセダンはそれなりの実績を残している。その違いはどこにあるのか?

「実用性とコスパ」ニーズに合致 日本のセダン

正直なところ日系ブランドのセダンが売れる理由は日本にいると分かりにくい。

そこで現地に住み自動車事情に詳しい何人かの人に尋ねてみたところ、「『実用的でコスパが高い。セダンを買うなら日本車を買っておけば間違いない。安心できる』という感覚が消費者にある」という共通する返事が返ってきた。

フォード・フュージョン
フォード・フュージョン    フォード

アメリカンブランドと日系ブランドでは、セダンに対する消費者のイメージが大きく違うというのだ。

ただ、日系のなかでもトヨタやホンダに比べると日産車はランキングの順位が低いのが興味深いところ。

実は、日産のセダンは日系ブランドの中では例外的にレンタカー供給が多いのだ。

その結果何が起きるかといえば、アメリカ車のセダンと同じようにリセールバリューが下がる。

だから新車が売れない。売ろうとすると販売奨励金を出して値引きせざるを得ないので、利益率が下がる。そのループなのである。

これはまさに、日産が本来ならドル箱であるはずの北米市場で抱えている悩みそのものだ。

数ばかりを求めた結果として値引きの拡大などでブランドイメージ低下を招き、大きな利益をあげられないのである。

開き直りとしたたかさ 今後はSUVで儲ける

ところで、アメリカンブランドがセダンを縮小しているのには、もう1つの側面があるといわれている。

それは「メーカーがSUVを売りたがっている」ということだ。

フォード・エスケープ
フォード・エスケープ    フォード

たとえばフォードの2018年の表明は、アメリカにおいてセダンだけでなくコンパクトカーのハッチバックも販売を縮小するとしていた。

それから3年が経過した今、すでに同社のアメリカにおけるラインナップに、ハッチバックは存在しない。

フィエスタもフォーカスも消えてしまったのだ。

では人々はそのかわりに何を買うのか?

同クラスのクロスオーバーSUVということになるだろう。

一般的にハッチバックに比べると、クラスは同じでもSUVのほうが販売価格は高く、そのぶんメーカーの利益率も高いといえる。

当然メーカーとしてはセダンやハッチバックよりもSUVを売りたくなる。

だから北米ブランドは、セダンやハッチバックをやめる一方でSUVの選択肢を増やし、消費者がより利益の出るクルマを購入するように導いている……と取れなくもない。

もちろん、SUVの流行という世の中の流れを受けての誘導ではあるのだが。

「セダンではどうせ日本車に勝てない。だったら利益率の高いSUVを買わせる」

フォードをはじめとする北米ブランドがセダンやハッチバックをやめてSUVのラインナップを強化する背景にはそんな開き直りとしたたかな戦略があるようだ。

SUVを選んでいるのは消費者自身である。しかし、もしかすると、消費者は気が付かない、意識しないうちに自動車メーカーによってSUVへ導かれている可能性も否定はできない。

ただし、これはあくまで日本ではなくアメリカ市場の話なのでそこは誤解なきよう。

記事に関わった人々

  • 工藤貴宏

    Takahiro Kudo

    1976年生まれ。保育園に入る頃にはクルマが好きで、小学生で自動車雑誌を読み始める。大学の時のアルバイトをきっかけに自動車雑誌編集者となり、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。はじめて買ったクルマはS13型のシルビア、もちろんターボでMT。妻に内緒でスポーツカーを購入する前科2犯。やっぱりバレてそのたびに反省するものの、反省が長く続かないのが悩み。

関連テーマ

おすすめ記事

 

トヨタ カローラの人気画像