【ダイハツ「新ロッキー」】秘策はシリーズハイブリッド 日産「eパワー」に当ててきたワケ

公開 : 2021.10.21 05:45

なぜ日産「eパワー」と勝負する?

ダイハツトヨタがシリーズハイブリッドを量産化する可能性については、ダイハツとトヨタ以外の各メーカーの間で「いつ登場してもおかしくはない」という感触を持ってきたように思う。

その背景には、トヨタ販売店に対するユーザーからの声がある。

日産ノート(現行モデル)
日産ノート(現行モデル)

先代ノートeパワーが、いま(2021年)から5年前の2016年11月に登場し、2017年から2018年にかけて一気に販売を伸ばしていった。

その頃、トヨタの販売店にアクアを見に来た人の中には「日産のハイブリッドはほとんどEVなので、トヨタのハイブリッドよりすごい」と話す人が少なからずいるため、販売員がトヨタのハイブリッドシステムとの差を来店者に詳しく説明することに苦心しているという話を、筆者は複数のトヨタ販売店幹部から聞いていた。

その後、トヨタはEV戦略を含めた総括的な電動化戦略をグローバルで国や地域の状況に応じて、規制や政治的な動きも踏まえて適宜修正してきた。

また、ダイハツの事業戦略も電動化やコネクテッド化などトヨタグループ全体としての図式の中で、トヨタ主体のもとで、トヨタとダイハツとの役割分担が明確になっていった。

そうしたトヨタとダイハツの関係の中で、2019年に生まれたロッキーとライズは、トヨタの新戦略プラットフォームTNGAとのつながりが強いDNGA採用で登場した。

トヨタ「クロス」戦略と相乗効果

トヨタとダイハツが日産eパワーの市場拡大を、指をくわえて静観し続ける訳がない。

開発時期を考えれば当然、2019年のロッキー発売の時期には、ダイハツ初の量産型シリーズハイブリッドのプロトタイプがテストコースで走行していたに違いない……。

ダイハツ・ロッキー
ダイハツ・ロッキー

日産の場合、既存ラインナップでは、三菱自動車工業との合弁企業NMKVで企画する軽自動車のより大きなクルマは、日本市場ではBセグメント(コンパクトカー)であるノートだ。

一方でトヨタの場合、ノート対抗はヤリスであり、ヤリスには当然のようにハイブリッド車を備えている。

また最近は、ヤリス・クロス、さらにカローラ・クロスと、トヨタの「クロス」フルラインナップ戦略が一気に拡大しているところだ。

そうした中で、車格はAセグメントとBセグメントの中間的存在でありDNGA採用のロッキー/ライズについては、「クロス」の別戦法としてeスマートハイブリッドと呼ぶシリーズハイブリッド導入となったということだろう。

こうしたダイハツ/トヨタの動きもあり、日産はノート・オーラ、ノート・オーラ・ニスモ、ノート・オーテッククロスオーバーなど、矢継ぎ早にノート派生車を送り出しているのかもしれない。

いずれにしても、ユーザーとして200万円~300万円前後での最新電動車選びの幅が広がるのは嬉しいことだと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

おすすめ記事

 

自動車ニュースの人気画像