【興奮する男のクルマ】アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガーへ試乗 後編

公開 : 2021.10.20 19:05

英国秘密情報部のために作られた、特別なアストン マーティンDB5。 その復刻版、ゴールドフィンガー・コンティニュエーションに英国編集部が試乗しました。

鋭く方向転換し、グリップ力にも不足はない

執筆:Mike Duff(マイク・ダフ)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
アストン マーティンDB5は、操縦性や安定性も非常に高い。タイヤはエイボン社製のクロスプライで、幅は185。ホイールサイズは不足のない15インチだ。

オーナーの要望でモディファイを受けたDB5も、オリジナル・モデルと同じくらい鋭く方向転換し、グリップ力にも不足はない。ロックトゥロックは4回転半で変わらない。ブレーキは4本ともに先進的なディスクタイプ。不足ない制動力を引き出せる。

アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーション(英国仕様)
アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーション(英国仕様)

このDB5には、タイヤ・シュレッダーと呼ばれる機能も付いていた。ホイールの中央、ハブから飛び出す回転するブレードだ。ただし、スポーティな装備とはいえないだろう。

走行性能を確かめている途中、思いがけない驚きがあった。シフトレバーのグリップ上部に配された赤いボタンは、追加されたオーバードライブのセレクターではなかったのだ。

ボタンを押すと、シートエジェクターと表現すべき機能がオンになる。ルーフが開き、人間ごと助手席を空へ打ち出すことが可能だという。どんな目的で装備されているのか、筆者には想像が難しい。

筆者はうっかり押してしまった。同乗し試乗評価を手伝ってくれていた同僚は、幸いにも無傷で済んだようだ※。

DB5に追加された特殊装備の中には、子どもっぽく映るものもある。だが少なくとも、特別なミッションの完遂を目的としていることは間違いないだろう。金塊と毒ガスにまつわる危機から救うために。

※シートエジェクターは実際には機能しません。

攻撃的で、しばしば噛み付く男のクルマ

オリジナルのアストン マーティンDB5は、非常に素晴らしいクルマだ。今後の購入希望者も、今回試乗したDB5と同等の機能を望む可能性は十分にある。筆者の唯一の不満は、ファーン・グリーンと呼ばれる単調なボディカラーくらいだ。

ある人物の依頼によってモディファイされたアストン マーティンDB5。1964年の試乗内容を、修正するほどの違いは感じられなかった。

アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーション(英国仕様)
アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーション(英国仕様)

むしろ秘密兵器の数々は、その結論をより強固なものにしていたといえる。このストン マーティンDB5はワイルドで攻撃的で、しばしば噛み付く、男のクルマといえるだろう。

コンティニュエーションとして小道具を再現

さて、アストン マーティンのコンティニュエーション・モデルは、正確なコピーとして製作される復刻版だ。だが今回試乗した最新のDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーションは、従来とは違う内容だといえる。ボンドカーのレプリカだという点で。

映画「007ゴールドフィンガー」に登場したボンドカーの場合、秘密兵器は撮影時に機能すれば良い小道具だった。しかし一般に販売されるコンティニュエーションの場合、繰り返し何度も機能することが求められる。

アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーション(英国仕様)
アストン マーティンDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーション(英国仕様)

同時に、安全性が担保される必要もあった。アストン マーティンの顧問弁護士たちは、その点に強くこだわったという。

完成したDB5 ゴールドフィンガー・コンティニュエーションでは、特殊装備のほぼすべてが再現されている。監修したのは、特殊効果デザイナーのクリス・コーボールド氏だ。

彼は最新作の「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」を含む、15本以上の007シリーズに関わった人物。オスカーの受賞経験も持つ。

機関銃や回転式のナンバープレート、車載レーダー、防弾リアスクリーン、オイルやスモークなどが実際に稼働する。1964年の「007ゴールドフィンガー」では活躍しなかった、伸びるオーバーライダーも機能する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マイク・ダフ

    Mike Duff

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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