【ロールス・ロイス級の乗り心地】シトロエンXM 英国版中古車ガイド 信頼性ならS2

公開 : 2021.10.21 08:25

1989年に、世界で最も快適なサルーンだとAUTOCARが評価したシトロエンXM。中古車としての魅力と注意点を、英国編集部が解説します。

世界一の乗り心地を持っていたXM

執筆:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
900ポンド(14万円)から手に入るロールス・ロイス。こんな見出しを付けても良いかもしれない。少し過剰表現かもしれないが。

英国の中古車市場を見てみると、1000ポンドもしないで買えるシトロエンXMが何台か見つかる。安心してしばらく乗りたいなら、もう少し上の価格帯から選んだ方が良いとはいえ。

シトロエンXM(1989〜2000年/英国仕様)
シトロエンXM(1989〜2000年/英国仕様)

もちろん、一番強気の価格のXMを選んでも、フロントノーズにパルテノングリルは付いていない。ドアを開いても、溢れんばかりのクロームメッキや柔らかなレザーが迎えてくれるわけでもない。

シトロエンのハイドロニューマチック・サスペンションは、ロールス・ロイスがシルバーシャドーにも採用した技術。XMが搭載する頃には、ハイドラクティブ・サスペンションへと進化し、「世界一の乗り心地」と1989年のAUTOCARでは絶賛している。

ただし、クラスをリードする乗り心地は最大のストロングポイントでありつつ、ウイークポイントでもあった。シトロエン・ファンが大げさだと反応する信頼性への不安を、生み出すきっかけとなった技術でもある。

実際に調べれば、ハイドロ・システムのメカニズムは比較的単純だとわかる。ある程度の道具と知識さえあれば、大々的なものを除いて、自宅で整備を済ませることもできる。

英国にも小さいながらXMのファン・コミュニティが存在する。英語だが、アドバイスをもらうことも可能かもしれない。

信頼性で選ぶならシリーズ1.5か2

シトロエンXMには、1989年から1994年までに製造されたシリーズ1と、1994年から2000年までのシリーズ2が存在する。細かな改良が加えられているが、個性的なインテリアとクリーンなボディラインを持つ、シリーズ1の魅力は捨てがたい。

シリーズ2のアップグレード内容は、安全装備の拡充や、パッシブ・リアステアリング搭載によるシャープさを増した操縦性など。新しいエンジンも獲得している。

シトロエンXM(1989〜2000年/英国仕様)
シトロエンXM(1989〜2000年/英国仕様)

さらに電気系統とハイドラクティブ・サスペンションに改良を受け、弱点も改められた。そのため、後期型の方が全般的に信頼性が高く、日常的に乗りやすいと考えられている。

筆者がオススメしたいのが、ファンの間ではシリーズ1.5と呼ばれる中期型。1992年から1993年の間のXMだ。後期型の改良が加えられつつ、スタイリングはより印象的な前期型を保っている。

シトロエンDSやCXの後継モデルとして、XMは低くシャープなスタイリングと他を圧倒する快適性を備えるが、先輩モデルのように取引価格は上昇していない。手頃に狙えるハイドロ・シトロエンだ。

ボディをデザインしたのは、カロッツェリアのベルトーネ。ただし、惹かれる見た目だとしても、同年代のクルマ以上に注意は必要ではある。

ボディは錆びるし、電気系統にも不安は残る。しかし、良い例を見つけて整備を欠かさなければ、当時最も快適なサルーンに乗ることができるのは事実。思い切って飛び込んでみるのも、悪くないかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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