メルセデス・ベンツとBMW 同じようで違う? EVの戦略・売り方の工夫

公開 : 2021.11.03 21:10  更新 : 2021.12.13 21:17

「EQ」と「i」 専用設計車に2社の色

どちらのブランドも、現状ではEVに独自のサブネームを与えている。BMWはi、メルセデスはEQだ。

ちなみにPHVはBMWでは「330 e」、メルセデスでは「A 250 e」などと、既存の車名の末尾にeをつけて区別しており、EVが特別な車種であることが伝わってくる。

IAAモビリティのプレイベントで世界初公開されたメルセデス・ベンツEQE。
IAAモビリティのプレイベントで世界初公開されたメルセデス・ベンツEQE。    AUTOCAR

でもすべてのiモデル、すべてのEQがテスラのようなEV専用設計というわけではなく、すでに一部は紹介してきたように、エンジン車のプラットフォームを共有する車種も多い。

EVシフトは最近になって急に決まったものであり、コストの関係もあって全車種を一度に切り替えるのは不可能なのだろう。

そこでどの車種がEV専用設計かを見てみると、メルセデスのEQSとEQEはともに4ドアセダンで、流れるようなプロポーションをはじめパッケージングも近い。

一方BMWのEV専用設計はi3とiXで、コンパクトなシティコミューターとラージサイズSUVという違いはあるが、短いノーズにスクエアなキャビンという幾何学的な造形は似ている。

トヨタの車種に当てはめれば、メルセデスのEV専用車は燃料電池を搭載しつつセダンに仕立てた「ミライ」を思わせるのに対し、BMWのそれは先進的なメカニズムにふさわしい斬新なデザインを組み合わせる「プリウス」に近いと感じる。

メルセデスとBMWはガチンコのライバルでありながら、これまでも独自の方向性を提示して、それぞれのファンに応えてきた。それがEV専用車にも当てはまるのは興味深い。

メルセデスがセダンにこだわるのは保守本流を貫くブランドイメージに合っているし、iシリーズのラディカルなデザインはBMWらしい。

日本での売り方/サポートの工夫

BMWについては日本での説明会ということで、この国でEVをどうやって売っていくかという説明もなされた。そこで感じたのは、最善か無かのメルセデスに対し、柔軟な対応を考えていることだ。

そもそもEVの歴史で見れば、BMWはメルセデスより長い。メルセデス初のEVは2019年発売のEQCだが、i3はそれより6年前の2013年に発売している。

BMW iX xドライブ40の前席内装。BMW日本法人は、11月4日から、渋谷、表参道などでiXの展示イベントを連続開催し、情報感度の高いユーザーに電動化をアピールしていく。
BMW iX xドライブ40の前席内装。BMW日本法人は、11月4日から、渋谷、表参道などでiXの展示イベントを連続開催し、情報感度の高いユーザーに電動化をアピールしていく。    AUTOCAR JAPAN編集部

BMWはi3のサポートを行う中で、電動車への対応を考えてきたという。

その中で考えたのが、航続距離に関する不安の解消。

バッテリー容量100kWhを燃料タンク100Lと考えてもらい、急速充電1時間で100L入ると説明している。このあたりはドイツ本国とは違う説明だそうだ。

また急速充電では、80%まで何分という表現を多く使うが、実際は10分間の充電で100kmぐらいは走れるので。10分単位で十分ではないかとメッセージするなど、不安を和らげる取り組みを進めているとのことだった。

メルセデスも日本市場では、EQCの大幅値下げに加えて、充電用ウォールユニット1基無料提供、設置費用一部負担などのサポートをしている。EV経験の違いが、モノで攻めるか、コトで誘うかという違いに現れている。

それは最善か無かのメルセデス、駆けぬける歓びのBMWという、両者のブランドイメージにも通じるものだ。

日本ではどちらのアプローチが支持されるのか、数年後にはある程度の結果が出ているかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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