ホンダHR−V 詳細データテスト 質感や経済性は良好 シャシーは優秀 パワートレインは力不足

公開 : 2021.12.04 20:25

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

現行CR−Vは、ホンダが乗り心地のよいクロスオーバーの仕立て方を知っていることを示している。それより小さい新型HR−Vも走らせてみるとおおむねなめらかで上品な乗り味だ。コントロールを保つため、大きすぎるロールも出さなければ、路面を捉えあぐねることもない。

なかなかにしなやかで、ラインナップ中で最大の18インチホイールを履いているにもかかわらず、タイヤのサイドウォールに厚みがあるので、そのクッション性で相殺している。ロードノイズは、よほど路面が荒れていなければ問題にはならない。

ホンダは、乗り心地のいいクロスオーバーの作り方を心得ている。静粛性も良好なのだが、そちらはエンジン回転を上げてしまうと大きく損なわれる。
ホンダは、乗り心地のいいクロスオーバーの作り方を心得ている。静粛性も良好なのだが、そちらはエンジン回転を上げてしまうと大きく損なわれる。    JOHN BRADSHAW

巡航時に騒音計が計測した数値は、クラス水準に対して並外れて低いとはいいがたいものだったが、耳には静かに感じられる。シートバックを介して背中に伝わるものも穏やかだ。

もちろんこれには、HR−Vが常にほぼ音のしないEV走行で発進することが効いている。しかも、プラグイン充電も大容量の駆動用バッテリーも備わらないわりには、驚くほどEV走行可能な距離が長い。

その全体的な洗練性と裏腹に、パワートレインは負荷が高まるとマナーに欠ける。それを避けるのは簡単だ。一切スポーティな走りをしなければいいのだ。

とはいえ、遅いクルマを追い越すときや、ジャンクション出口や合流路で素早く加速しようとすれば、エンジンを回さざるをえない。その場合、このクルマが感じさせる静粛性は崩れ去ってしまう。

燃料タンクをフロントシート下に配置したことは、普通より高いドライビングポジションの原因にもなっている。それは優れた視認性をもたらしてくれるのだが、長距離乗っていると、やや野暮ったいクルマに思えてくる。

それでも、少なくともドライビングポジションのアジャスト性は良好だ。また、キャビンに使われるマテリアルの質感も十分に高く、それなりに高級感がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。

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