DOHCの小粋なオープン フィアット1500S カブリオレ x アルファ・ロメオ・ジュリア・スパイダー 後編

公開 : 2022.04.03 07:06

当時の4気筒としては秀逸な洗練性と個性

冷えた英国の冬にエンジンを始動するには、どちらもアクセルペダルを数回踏んで、ポンピングする必要がある。始動すると威勢よくひと吠えするが、すぐに静かに落ち着いて、安定したアイドリングに移る。

市街地の移動を低回転域でこなせる粘り強さに加えて、高回転域で活発になりドライバーを楽しませてくれる洗練性と個性は、当時の4気筒エンジンとしては秀逸。技術力の高さを証明している。

アルファ・ロメオ・ジュリア・スパイダー・ヴェローチェ(1964〜1965年/欧州仕様)
アルファ・ロメオジュリアスパイダー・ヴェローチェ(1964〜1965年/欧州仕様)

ソフトトップを閉めると、2台ともに感心するほど車内は静か。風切り音は小さく、サスペンションは適度に硬いが、粗野にボディが振動することもない。

ボディロールは、ジュリア・スパイダーの方が大きい。それでも、60年前のクルマだということを考えれば、扱いやすくモダンな印象を受ける。

パワーでは20psほど勝り、MTは1段多い。どんな状況にも対応できるギア比と、滑らかにスライドできるシフトレバーが相まって、より自然に速いスピードで運転できる。

一方、1500S カブリオレに載るオスカ・エンジンは、サウンドがより甘美。シフトフィールでは敵わないが、ノイズは控え目で、すべての段にシンクロメッシュが備わり変速しやすい。

ボディシェルは、フィアットよりアルファ・ロメオの方が剛性感が高い。ステアリングホイールには不要なキックバックも伝わらず、正確に反応する。

陽気で穏やかなリビエラの空気感

コーナーでの安定感は、1500S カブリオレの方が上。四輪ともにコイルスプリングのアルファ・ロメオとは異なり、リアがリーフスプリングだという事実を感じさせない。扱いやすく、すぐに全力を発揮できる。

細身のタイヤは、簡単にドリフトを始める。ステアリングは切り始め付近で曖昧で、レシオも低い。ロック・トゥ・ロックは3回転だ。

フィアット・オスカ1500S カブリオレ(1959〜1963年/欧州仕様)
フィアット・オスカ1500S カブリオレ(1959〜1963年/欧州仕様)

見た目では、ジュリア・スパイダーがドライバーを誘惑する。盾の形のフロントグリルに、緩やかにカーブを描くテール。オーバーハングも短く、1500S カブリオレよりバランスが良い。ボディラインも、より艷やかで優雅だ。

フィアットのスタイリングにも、遊び心は感じられる。だが、2台を並べるとフォーマルな雰囲気も漂う。

ロジカルに比較すると、ジュリア・スパイダー・ヴェローチェの方が有利ではある。それでも、筆者には1500S カブリオレも捨てがたい。見慣れないフィアット・オスカというだけで、惹かれてしまう。

スタイリングやシャシー、全体の仕上がりは、アルファ・ロメオには及ばないかもしれない。それでも、陽気で穏やかな、リビエラの空気感を漂わせているからだろう。

協力:クラシック・モーター・ハブ

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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