時代の最高速モデル 1940年代 ジャガーXK120 ベルギーの高速道路で213.4km/h

公開 : 2022.04.17 07:05

直列6気筒エンジンの威勢のいい排気音

今回ご登場願ったジャガーXK120は、RACラリーへ参戦した有名なマシンをオマージュしている。1950年式で、オーナーによるとミッレ・ミリア出場に向けたセットアップだという。

助手席側のダッシュボードには、ブランツ社製のデジタル・ラリータイマーが載り、中央上部にはブレモント社製のアナログ時計が2枚取り付けられている。それ以外はノーマルのまま。助手席側の足元に、消火器が積まれている程度だ。

ジャガーXK120(1948〜1954年/英国仕様)
ジャガーXK120(1948〜1954年/英国仕様)

レザー張りのバケットシートは小ぶりで、体にピッタリとフィットする。ドアは小さく、ステアリングホイールは大きいから、身体はスリムで柔軟な方が良い。

ダッシュボードは、大きなレブカウンターとスピードメーターが占拠し、その隙間に油圧と水温、電流と燃料のメーターが並んでいる。飾り気はない。

ハンドブレーキ・レバーは、トランスミッション・トンネルの助手席側。クロームメッキで仕上げられ眩しい。短いシフトレバーが、腕に自然とフィットする。

ステアリングホイールは、4スポーク。ほぼ垂直に取り付けられ、半球形のボスが、胸元に迫っている。

ツインSUキャブレターに燃料が送られるのを待ってから、スターターボタンを押す。3442ccの直列6気筒エンジンが、待っていたかのように目覚める。2本出しのマフラーから、威勢のいい排気音が放たれる。

クルマが積極的に走りたいと訴えてくる

モス社製の4速MTには、間違ってリバースへ入らないようにするストッパーがない。1速を選ぶ時は、シフトレバーを左側へ倒しすぎないように気を使う。だが、運転自体は至ってシンプルだ。

ステアリングホイールもペダルも、重すぎず扱いやすい。反応は漸進的で、ドライバーへの要求は少ない。シフトレバーの動きは正確で、つなぎやすい。クイックな変速も受け付けてくれる。

ジャガーXK120(1948〜1954年/英国仕様)
ジャガーXK120(1948〜1954年/英国仕様)

ジャガーXK120は、積極的に走りたいと訴えてくる。感触豊かなステアリングホイールを切り込み、コーナーへ飛び込む。重心は低く、不安感はない。

ドライバーの座る位置は、リアタイヤ側に近い。雪に覆われたアルプス山脈のワインディングでも、リアタイヤの挙動が把握しやすく心強かったことだろう。クルマの動的能力を、直接的に理解できる。

お借りしたXJ120にはショートレシオのギアが組まれ、最高速度は160km/hを超えないという。それでも、70年前にベルギーの高速道路を疾走したドライバーの姿を、まじまじと思い浮かべることができた。

ステアリングホイールを握るサットンは、小さなフロントガラスに頭をかがめ、右足へ力を込めたのだろう。スピードメーターの針が駆け上がる様子を、視界の隅に入れながら。

協力:ジャガー・ランドローバー・クラシック

ジャガーXK120(1948〜1954年/英国仕様)のスペック

英国価格:1263ポンド(1948年時)/15万ポンド(約2400万円)以下(現在)
生産台数:7612台
最高速度:213.4km/h
0-97km/h加速:12.0秒
車両重量:1324kg
パワートレイン:直列6気筒3442cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:162ps/5200rpm
最大トルク:26.9kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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