従来より上級志向に BMW i7 プロトタイプ 試作車へ試乗 SクラスやEQSのライバル

公開 : 2022.04.12 08:25

印象的な快適で安定した乗り心地

フロントタイヤの向きを変える可変レシオのステアリングは、フィードバックが乏しいものの、重み付けは良好。多くのライバルサルーンより、間違いなくコミュニケーション力は高い。

リアにも操舵システムが与えられるが、既存の7シリーズより切れ角は大きい。低速域で扱いやすくし、高速域で安定性を高めるという目的も、実現できていると感じた。i7は、ひと回り小さい7シリーズのように俊敏に身をこなす。回頭性も良い。

BMW i7 プロトタイプ
BMW i7 プロトタイプ

タイヤは、フロントが255/45、リアが285/40というワイドな21インチを履いていた。銘柄はヨコハマ・アドバンスポーツで、グリップ力は充分以上のようだった。

市街地での運転で気になったのは、ボディの幅。全幅もまだ明らかではないが、間違いなく現在の7シリーズより広い。

そんな大きなi7を支えるのは、ロールス・ロイス・ゴーストも採用するエアサスペンション。乗り心地と姿勢制御とを、上手にバランスさせているようだった。アームの構成は、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式になる。

エアスプリングとアダプティブダンパーが相乗し、快適な乗り心地を生んでいた。特に、衝撃吸収性には優れているようだ。電子制御のアンチロールバーが、ボディロールを巧みに抑え込んでいたのも印象的だった。

ブレーキペダルの反応は、漸進的ながら感触が薄い。回生ブレーキの強さは3段階から選べ、最大で208kWのエネルギー回収を実現させたという。航続距離は、643km前後が見込まれている。

ロールス・ゴーストやルーシッド・エアーも競合

グレード名なども不明。だが、xドライブ40、xドライブ50、M60という、iXと似た展開になることが予想できる。

純EVへ乗り換える準備が整っていないドライバーや道路インフラを持つ国に向けて、内燃エンジンを載せた7シリーズも、i7と並行して販売される。3.0L直6ターボの740iと、4.4L V8ターボの750iは、欧州市場には投入されない見込み。

BMW i7 プロトタイプ
BMW i7 プロトタイプ

そのかわり、PHEVが用意される。マイルド・ハイブリッド3.0L直6ディーゼルターボの740dも提供されるらしい。

まだ不明点が多いニューモデルのi7と次期型7シリーズだが、従来より上級志向を狙っていることは間違いない。拡大したボディサイズを考えると、メルセデス・ベンツEQSSクラスだけがライバルではないことが伺える。

グループ内の上級ブランド、ロールス・ロイス・ゴーストもその対象。北米の新メーカー、ルーシッド社のエアなども、見据えているに違いない。

プラットフォームを共有する、7シリーズとの差別化を巧みに果たそうとしているi7。プロトタイプとはいえ、その完成像をうかがい知ることはできた。

BMWは、中国や北米を主要市場に設定している。しかし動的能力や乗り心地、洗練性、存在感などは、欧州や日本のユーザーにも響くはず。お披露目まで、もうすぐだ。

BMW i7 プロトタイプのスペック

英国価格:約12万ポンド(約1920万円/予想)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:199km/h(予想)
0-100km/h加速:4.3秒(予想)
航続距離:643km(予想)
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2300kg(予想)
パワートレイン:ツインAC同期モーター
バッテリー:105kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:543ps(予想)
最大トルク:81.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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