アストン・マーティンV8ヴァンテージN430

■どんなクルマ?

アストン・マーティンにおけるヴァンテージ・シリーズの最終的なモデル・チェンジは2018年まで待たねばならない。さらにその時には、群を抜いたパフォーマンスを発揮するアルミニウム押し出しのVH(バーティカル・ホリゾンタル)構造は別のものに置き換えられることになるだろう。来たるべき日が来る前に、まずはDB9に手が加えられ、その後に全てのモデルに新たなビジュアルと新開発技術を取り入れるというおおよそのスケジュールが明らかになっている。言い換えれば、その日が来るまでは、現存するモデルに改良を加え、史上最高と呼ばれるに値する作品を世に送り出す必要があるのだ。

ではN430は今までのV8ヴァンテージとどこが違うのだろうか。われわれは、わざわざページを割いてまで「いままでと違う特別色なのです」などと言うつもりはない。どうやらこちらのモデルはブガッティ・ヴェイロンやランボルギーニ・ガヤルドの独占領域に踏み込もうとしているようなのだ。改めて言うけれど、いまはわれわれにとって、’待ち’ の時期、あるいは ’スペシャル・エディション’ を受け入れる以外に選択肢はない時期なのだ。

このクルマのモデル・ネームはN430。表面的にはV8ヴァンテージではあるが、10psアップされた点やヘッド・レストに贅沢にあしらわれたステッチなど、ヴァンテージSの方が共通点が多い。

写真の ’レース’ というモデルに採用されたアローロ・グリーンを含む5色が展開され、われわれの目にはとても贅沢うつるバリエーションだ。それらのメイン・カラーと対照的なカラーリングがグリルの周辺や、リアのディフューザーに施されている。とまぁ、蘊蓄を傾けるのはこの辺にして実際に乗ってみることにしよう。

■どんな感じ?

動力性能においては、過去に感じた印象と変わりなく、同時に欠点のつけようがない。二度に渡って(その際はV8ヴァンテージSとV12ヴァンテージS)、ブリティッシュ・ドライバーズ・コンテストにて輝かしい結果を残しただけのことはある。

したがってN430のハンドリングはこの上なく素晴らしい。油圧式アシストによるステアリングは、甘美で正確、またギアレシオは的確で重さも好ましい。間違い無くこのクラスのベンチマークとなるだろう。安定感のあるアンダーステアを誘発するが、このハンドリングを持ってすれば自然に軌道修正することも、また若干のテール・ハッピーを許容しながら思いのままに操舵することができるだろう。

とはいうものの、乗り心地は非常に硬い。V8ヴァンテージSと同様にN430にもパッシブ・ダンパーが採用されているため、V12ヴァンテージSのように、その硬さを緩和させたり、あるいは更に締め上げたりすることはできない。ただしそもそもベースとなったグレードには ’S’ という文字が添えられているだけに、硬さに関してはある程度目を瞑らなければならないと思う。ポルシェ911 GT3に乗ってまで乗り心地が悪いなどと文句を言えないのと同様に。また、魅力的なエンジン、良くも悪くもないギアボックスに関してもヴァンテージSで既に体験済みだ。

最も批判すべきだと感じる点はインテリアである。アストン・マーティンは内装のフィッティングや仕上げ、コミュニケーション・システムを手仕事によりゆっくりとレベル・アップしてきたがゆえに、9年前のモデルより遥かに進化したのだが、世界の強豪に勝る完成度にはまだ達していない。’ハンドメイド’ であるが故の生産性の低さは重々理解できるのだが、それがカスタマーを納得させる理由になっているかどうかは熟考する必要がありそうだ。

■「買い」か?

こればかりは、あなたが何を優先するかに尽きる。キャビンに関しては、他のライバル車たちは着実に進化する一方、ハンドメイドによる独特な雰囲気をライバルが真似することは不可能だろう。しかしながら、ヴァンテージの場合ステレオの操作ひとつにしても、もどかしい思いをする羽目になるのは避けようのない事実である。

ただしそれらの欠点よりも重要なドライビング・エクスペリエンスにおいてN430より上を行くクルマを見つけることは難しい。甘美なハンドリングを兼ね備えたクルマをお探しならば、買って損することはないだろう。その上、その面白さは年月とともに廃れることなく恒久的に持続するような魅力がある。

(マット・プライヤー)

アストン・マーティンV8ヴァンテージN430

価格 £89,995(1,560万円)
最高速度 306km/h
0-100km/h加速 4.8秒
燃費 7.3km/ℓ
CO2排出量 321g/km
乾燥重量 1610kg
エンジン V型8気筒4735cc
最高出力 436ps/7300rpm
最大トルク 49.9kg-m/5000rpm
ギアボックス 6速ロボタイズド・マニュアル

 
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