Netflix番組のおかげ? メルセデスF1、EVへ完全移行後も参戦継続 マーケティングに活用

公開 : 2022.05.11 06:05

メルセデスは、市販車がEV(電気自動車)に完全移行してからも、F1への参戦を継続する意向を示しました。

2030年に市販車EV化 脱炭素への取り組みは

メルセデスは、市販車部門が2030年までにEVに完全移行してからも、F1参戦を継続することを明らかにした。

英国を拠点とするメルセデスのF1チームは、2014年から2021年にかけて8年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、また7年連続でドライバーズタイトルも獲得している。

メルセデスF1は今シーズン、新規定によるマシンの空力問題に悩まされている。
メルセデスF1は今シーズン、新規定によるマシンの空力問題に悩まされている。

しかし、今シーズンは新たなレギュレーションの下でペースが落ち、現在コンストラクターズでは首位のフェラーリに62ポイント差の3位につけている。また、メルセデスの市販車部門は、2025年からはEV用プラットフォームにのみ投資し、2030年からは「市場の状況が許す限り」EVのみを販売すると公言している。

「(当社は)脱炭素の道を歩むと決めたのです。そして、それはF1でも同じことです」とケレニウスCEOは語った。

「次のパワートレイン規制では、電動化がより重視されるでしょう。F1をCO2ニュートラルなものにするという明確なコミットメントがあるのです」

「新しいレギュレーションでは、電気系がラップタイムに与える影響が増えるでしょう。内燃エンジンは存続しますが、CO2を排出しない燃料開発のための実験台となります。この燃料は、航空産業では確実に必要となりますが、自動車用パワートレインの出力を低下させる可能性もあります」

「アブダビGPのようなレースをバッテリーだけで走れるレベルにはまだ達していません。F1のようなスポーツはショーでもあるので、脱炭素の道を歩まなければなりません。バッテリー技術はまだまだです」

「しかし、電動化に重点を置いてCO2フリーを実現することで、F1は今後も重要な存在であり続けるでしょうし、わたし達もレースに参加し続けることができるのです」

また、F1とフォーミュラEが最終的に統合されることは避けられないのかと問われたケレニウスCEOは、「それについて憶測で語るつもりはありません。わたしが知っているのは、F1が常にモータースポーツの最高峰であり続けるということだけです」と答えた。

さらに、若者の間でF1への関心が急上昇していることも、メルセデスの参戦継続のカギを握っているとし、次のように語った。

「特に若い層で大きく伸びています。Netflixの『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』シリーズは、その中でもゲームチェンジャーのようなものでした。ですから、わたし達もその番組に参加し、F1参加勢力の1つとなり、当社の技術開発だけでなくマーケティングにも活用できることを嬉しく思っています」

昨シーズン最終戦のアブダビGPで、レースディレクターによってルールが破られ、ルイス・ハミルトンがチャンピオンを逃した件については、「大きく感情を動かされました。スポーツの世界では、希望から絶望へと数秒のうちに変わってしまうことがあります」と語っている。

「でも、それがスポーツのいいところです。打たれても、また立ち上がる。競技者として、またコースに出て、戦い続けるのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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