スーパーカーの概念を一変 ホンダNSX(初代) V6 VTECをミドシップ 英国版中古車ガイド

公開 : 2022.06.01 08:25

ホンダ・ブランドを強く輝かせたNSX

4速ATのギア比に不満が出たことも事実だが、どのNSXを選んでも、スリリングなドライビング体験は共通している。タルガルーフなら、オープンエアも楽しめる。

技術的にも先進的で、素晴らしい操縦性にその成果が表れていた。特に強固なアルミ製シャシーは、革新的なものだった。サスペンションのウイッシュボーンもアルミ製で、コンロッドにはチタンが用いられるなど、通常のホンダとは一線を画す成り立ちだった。

ホンダNSX(初代/1990〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代/1990〜2005年/英国仕様)

熟成された、優雅なスーパーカーといえた。多くの競合メーカーに刺激を与え、ホンダというブランドを強く輝かせる存在でもあった。

信頼性に定評のあるホンダだけに、同年代の高性能モデルとは異なり、30年後にオーナーになっても面倒なトラブルに悩まされる可能性は低い。ただし、価値が認められ近年は価格も上昇傾向にある。思い立ったのなら、実行は早い方が良いだろう。

新車時代のAUTOCARの評価は

速くてスタイリッシュ。NSXには欧州のスーパーカーへ挑戦するために必要な、すべてが揃っている。ドライビングポジションに優れ、運転席からの視界も素晴らしい。

トルクが不足気味で、静止加速や中間加速はややもの足りないものの、フェラーリ348より最高速度は上回る。優れたエンジンとレスポンスの良いシャシーが組み合された、刺激的なドライビングマシンだ。しかも安定性も高い。

ホンダNSX(初代/1990〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代/1990〜2005年/英国仕様)

NSXは、多くの条件でフェラーリを打ち負かすことができる、現実世界のスーパーカーといえるだろう。(1990年12月19日)

購入時に気をつけたいポイント

エンジン

しっかり整備されてきたかどうか、履歴を見て確かめたい。エンジンオイル漏れは珍しくない。バルブカバー・ガスケットやシール、ソレノイド付近が湿っていないか確かめる。

VTECがカムを切り替える際、異音が出ないか確かめたい。滑らかに動き、エンジンの温度に関わらず通常はノイズを出さない。

ホンダNSX(初代/1990〜2005年/英国仕様)
ホンダNSX(初代/1990〜2005年/英国仕様)

タイミングベルトとプーリー、ウォーターポンプは、英国では11万2000km毎の交換が指定されていた。リザーバータンクなどからのクーラント漏れにも注意したい。

トランスミッション

MTのクラッチは約8万km使える。ニュートラルの状態でクラッチペダルを踏み込むと、インプットシャフト・ベアリングからノイズが出ていないか確認できる。

1992年式までのNSXでは、シフトレバーに緩みが出たり、トランスミッションからノイズが生じることがある。走行中にシフトが抜ける場合は、スナップリングやサークリップの劣化かもしれない。可能なら購入は避けたいところだ。

サスペンションとブレーキ

サスペンションは耐久性に優れるが、アルミ製のウイッシュボーンは衝撃に弱い。交換部品も高い。ブッシュやボールジョイント、ベアリングなどは、サーキット走行を重ねると傷みも早い。タイヤが偏摩耗している場合は、アライメントが狂っている証拠。

エンジンスタート時にABSユニットからうなりが聞こえるが、正常ならすぐに収まる。ブレーキディスクは、5万km程は使えるだろう。

ボディ

アルミ製ボディは安く修復できない。フロントバンパーは樹脂製だが、こちらも高価。アルミは加工が難しく、技術が求められる。パテ盛りや部分的な塗装が施されていないか、良く観察したい。

ボディパネルやドアの隙間は、きれいに揃っているのが正解。フロントガラス周辺など、ラバーモールの状態もチェックポイント。可能ならカーペットなどをめくり、ボディの接合部分を観察したい。

電気系統とインテリア

初期のステレオユニットは故障しやすい。社外品への交換は簡単ではないようだ。センターコンソールは樹脂にゴムコーティングされているが、擦れて剥がれてくる。パワーウインドウのレギュレータは故障しがち。ドアハンドルの状態も確かめたい。

エアコンが正常に機能しているか確認する。タルガルーフの場合、取り外せるパネルの状態を確かめる。走行距離が長いほど、シートのサイドサポート部分は磨り減る。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ピアソン

    Mark Pearson

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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